その3


サツマイモ資料館を作ったわけ(平成4年9月2日)

 鹿児島県鹿屋市で洋風のサツマイモ料理専門店、「フェステバロ」(祭)を経営している郷原茂樹社長夫妻が従業員7人を連れて「いも膳」へ遊びに来た。「いも膳」の神山正久社長と親交のある人で、互いに行ったり来たりしている。

 資料館ではちょうど今日から秋の特別展、「いも膳開店10周年記念展」が始まった。神山社長はそれを見てもらうため、郷原社長一行を案内してきた。そして資料館を作ったわけを聞かれると、こう答えていた。

 「今はたしかにサツマイモブームでしょう。でも『たかがサツマイモ』とされちゃうことも多い。それでそれを活かした料理だけでもこれだけのことができるんだということを、形で示したかった。それがこの資料館で、イモ料理を始めて7年でできました。

 商売は利益の追求だけでは面白くない。その中に夢が欲しい。金銭に関係のない部分が欲しい。それがうちでは入場無料、日本唯一のサツマイモの資料館なんです」 

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サツマイモ資料館の展示と運営をよくするにはどうしたらよいか (9月9日)

 30年近くも親しく付き合っている県立民俗文化セン夕ーの朱通祥男工芸室長が、新米館長のわたしの仕事ぶりを見に来てくれ、こんな助言をしてくれた.

 「先生の仕事ぶりを見て、すばらしいなあ、ああできればなあと思うことがあります。それは客が来るとさりげなく寄って行って、手近な展示品の説明を始めちゃうこと。日本の博物館で館員が自分の方から入館者に話しかけるということは、まずありません。

 だからだれも専門的な知識を持っている人から、なにかを教えてもらえるなんて思っていない。それが先生は違う。だれにでもかわず話しかけ、相手をイモ話に引き込んじゃう。ここへ来る人はイモ好きな人たちばかりだから嬉しくなっちゃって、たちまちワイワイガヤガヤしゃべりだす。

 こんなににぎやかな博物館は見たことがない。博物館はこれでなければならないのだが、実際にはできない。それを先生は当然のこととしてやっている。入館者のあの目の輝きや嬉しそうな顔を見れば、もう言うことなしです」

 「ただ展示方法はまだまだ。言っちゃあ悪いが、高校生の文化祭のレべル。素人くさく、平板的。ではどうすればいいか? 立体的なものをふやし、立体的な展示をエ夫するんです。その気で他の資料館なり博物館なりを見に行って下さい。わたしの言っている意味が分かるはずです」

 「次は展示品の精撰。それにしても狭い所にまあゴチャゴチャ並べましたね。思い切り、整理しましょう。たとえばここで1番人気があるという生イモのコーナーもだめ。30種類もあるというけど、わたしにはどれも同じものに見えちゃう。素人にも分かるのは皮の色による区別。赤イモか白イモかの二つ。

 次は中身の色による区別。白か黄かオレンジか紫かの4種。あとは時代による区別。昔なつかしいもの、今、八百屋にあるもの、これから伸びそうな未来のイモ。これぐらいの区別で整理すればすっきりするし、展示をする側の主張も理解してもらえるんじゃあないですか」

 「それとサツマイモは見るものじゃあない、食べるものでしょう? 食べ物は、うまいか、まずいかだけが問題。だからこれぞというものをふかしたり、焼いたりしておいて試食してもらい、感想を聞く。毎日でなくていいんです。週に1〜2回、それも時間をきめて、一切れずつでいいんです。絶対受けますよ」

 朱通さんはかつて埼玉会館郷土資料室の室長だった。その時、特別展『ザ・さつまいも』(1986.10.1〜26)を企画開催し、同室始って以来の大当りを取ったイモ通だ。それだけにその助言は適切なものばかりで、本当に嬉しかった。

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川越だからなんでもないものの資料館が作れる(10月13日)

 当館には関東の農業関係の団体がよく来てくれる。わたしがまず展示品の説明をやり、質問を受ける。そのあとこっちから向うの甘藷事情を尋ねる。みんな甘藷農家だから、たちまち話がはずみ仲良くなる。

 今日は千葉県香取郡山田町の生活改善グループの婦人、40名が来館、楽しい研修会を開いた。引率は同町役場の篠塚敬治環境課長。同氏は研修会後の雑談の時、こんな感想をもらしてくれた。

 「いやあ、来て良かったです。サツマイモなんてどこにでもあるものでしょう。特にうちの方はイモ畑一色の『いもどころ』だから、川越へ行ったって大したことはないと思ってたんです。ところが来て見て驚いちゃった。サツマイモがこんなに様々な面を持っていたなんて、ちっとも知らなかったですからね。でもねえ、こういうことができるのも、川越だからだと思うんです。うちの方で同じことをやったってだれも来てくれませんよ」

 たしかに川越は伝統と地の利に恵まれている。江戸時代以来、日本一うまいイモの産地で通ってきたし、緑に飢えている巨大な首都、東京に近接している。でも山田町だっていいイモの産地だし、それで町おこしをしようとしている所だ、「なにかやっているんでしょう?」と聞くと、やっぱりあった。以下がそれで、すばらしいことをやっているではないか。

 「町名が同じということで、うちは岩手県の三陸海岸の町、山田町と姉妹都市になっています。それで向うの秋祭りに、こっちのサツマイモを持って行って直売しています。

 うちは下総台地上のサツマの大産地ですからね。岩手の山田町にもサツマはあるけど味がだめ。だからうちのイモは引っぱりだこです。味だけでなく、色も形もいいとね。

 えっ、品種? べニアズマです。うちの町には前々から農協の農業祭がありました。それを全町民のものにしようと、昨年から『ふれあい祭り』に改めました。11月3日で、その日には岩手の山田町の人が来てくれて、海のものを直売してくれます。三陸の海で取れたサケ、ホタテ、ワカメなどいろいろです」

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