その8


イモ天ははねちゃう(平成5年2月7日)

 男のイモ嫌いは相当のもののようだ。50代の男、10数人の1団が展示室のさまざまなイモを見ながらこんな話を大声でやっていた。

「サツマはだめ。食うとすぐ胸が焼ける」

「そう、そう、おれも」

「天ぷらにサツマが入ってることがあるだろう。そんな時はそいつを最初にはねちゃう」

 男がいくらイモ嫌いでも、天ぷらの1きれぐらいは食べるものと思っていた。ところがそれは甘かった。絶対に妥協できない人もいるようだ。

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習慣性(6月27日)

 東京の本郷3丁目に楠亭というフランス料理の店がある。店の前に樹齢600年というクスノキの巨木があるのですぐ分かる。今日はここでわが家の長男、健の結婚披露宴があった。

 わたしはどこででもサツマイモの話をしてしまう。今日も宴席で初めて顔を合わせた新婦、さっちゃんの女友だちにこう聞いてしまった。

 「サツマイモは男にとってはどうということもないもののようですが、女の人で嫌いな人はいませんね。なんででしょう?」

 するとインテリア・デザイナーの彼女は、その訳をこう解いてくれた。

 「女にとってサツマイモって、緑茶やコーヒーが欲しくなるのと同じようなものなのね。習慣性と言うのかな、少し食べないでいると、むしょうに食べたくなってくるものなの。だから1本500円もする焼き芋だって買っちゃうの」

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武田説(7月2日)

 当館1階の売店ではサツマイモ関係の本も売っている。今日もあるお客さんが「ここはただのおみやげ屋じゃあないね。いい本があるから」とほめてくれた。

 ただサツマイモ関係で一般向きのものとなるとそうはない。雑誌を入れても10数種類ほどしかない。その中で一番売れているのが、千葉県農業試験場技監、武田英之氏の『まるごと楽しむサツマイモ百科』(農文協、1989年)だ。

 この本は冒頭からふるっていて、最初の見出しが「なぜ女性はおいも好き?」だ。武田説によると日本人の腸は欧米人より長いので便秘しやすい。女性は特にそうなので食物繊維が多いうえ、ヤラピンという緩下成分を持つサツマイモを、体が自然に求めるのだという。

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あまいから好き(7月21日)

 浦和市に幹書房という出版社がある。埼玉県各地のガイドブックなどを出している所で、今秋にはその一つ、『川越見て歩き』も出るという。

 ここの編集長は女性で高知出身の竹内和子さん。おイモが大好きという人で、川越出張の帰りなどによく寄ってくれる。今日も顔を見せてくれたので、「女性はどうしてそんなにおイモが好きなの?」と聞くと、こういうことだった。

 「女性の好きなものはイモ、クリ、ナンキンね。いつもそう聞いているとその気になっちゃうのよ。サツマイモも好きだけど、クリもカボチャも好き。どれもホクホクであまいのがね。女はあまいものが大好きなのよ」

 主婦と生活社の『栄養学おもしろ事典』(昭和5十8年)にも、それを裏付ける記事がこうある。

 「さつまいもを好む男性は少ないが、女性は嫌いという人より、好きだという人のほうがなぜか多い。これはひとえにさつまいものあの甘さによるものではなかろうか」

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血が騒ぐ(9月13日)

 東京テレビの取材班が資料展示室の新イモを撮りに来た。仕事の合い間に、若い女性アナウンサーに例によって女性のイモ好きのわけを聞くと、面白いことを言った。

 「なぜって言われても困っちゃうけど、とにかく好きなのよ。わたしなんかおイモでできてるものならなんでもいい。

 スイートポテト、イモアイス、大学芋、焼き芋、イモかりんとう、なにからなにまで欲しくなっちゃう。そういうのを『血が騒ぐ』というんじゃない」

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疲れると焼き芋(平成6年1月7日)

 神奈川県の川崎から来たという50代の主婦の一団が、資料展示室の中で口々にこんなことを言っていた。

「女はあまいものが好きなのよね」

「週の半分まで来ると疲れが出てくる」

「そう、そう。だから大福か焼き芋が食べたくなる」

「でも大福は太るんじゃあない?」

「だから焼き芋になっちゃう」

「あら、焼き芋は大福よりずっと高いわ」

「それが問題。なんで焼き芋はあんなに高いの?」

 最近の主婦の嘆きはサツマイモが高くなり過ぎ、高根の花になってしまったこと。これではマスコミが健康食、美容食、長寿食とはやしてくれても、実需はふえまい。

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バスガイド嬢と焼き芋(6月16日)

 当館には貸し切りバスで来てくれる団体もある。今日、茨城から来た婦人団体は予定より40分も早く着いたので、その分も含めイモ話をたっぷり聞かせてくれと頼まれた。時問は短いより長い方がやりいいが、1時間もあると途中で飽きられてしまう。そこで話の合い間に「ガイドさんもおイモ好き?」と聞いてみた。すると30近いべテランで、ざっくばらんなガイド嬢がこんな話をしてくれた。

 「みなさんご存知? ガイドの暮しは不規則なの。こんなこと言っちゃ悪いけど、なんでもがお客様の言いなり。だから三度の食事時間も毎日違うし、トイレだって行きたい時に行けないのが当たり前。それでだれでも便秘になっちゃう。

 その特効薬がみなさんご存知のオサツ。高いなんて言ってられない。お薬なんだから。毎日のツアーでガイドが楽しみにしているのがイモ菓子探し。昔と違って今は種類もどんどん増えている。それに焼き芋屋でもあれば最高。一番効くのは焼き芋だものね」

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