その48


出世したサツマイモ(平成17年1月20日)

 今年、平成17年(2005)は戦後60年になる。昭和6年(1931)生まれの自分自身を含めて、戦前生まれは年々少なくなり、いまでは日本の総人口の四分の一にしかならない。こうなると絶対多数派になった戦後生まれの人たちのサツマイモに対する感覚がわからないことには、当館の什事はこなせない。

 今日取材にきてくれたある雑誌の若手女性記者にそんな話をすると、こんな話をしてくれた。

 「わたしは長崎県諌早市の出身です。おいもはいくらでもあるところで、子供の頃から大好きでした。旅行で沖縄に行った時もおみやげに紅いものお菓子を数種類買ってきたほどです。おいもの産地の者がですよ。

 ただ諌早には屋台の石焼き宇屋はなかった。その後東京の大学で学ぶことになって上京したら、それがいくらでもあったのです。もう嬉しくって、嬉しくって。ずいぶん買ったものです。

 街の中で石焼き芋を買うことへの抵抗感ですか? ちょっぴりありました。あれをたべるとオナラがでると言いますね。それを女子大生が買うんですから。

 わたしたち女性にとってのおいものイメージですか?

 あまくって、あたたかくって、しあわせいっぱいというところかな。だから女性でおいもが嫌いという人はいませんね。

 それと『デザート』。それもおしやれで高級な。その代表がスイートポテト」

 それでわかった。さいきんの郡会のデパ地下で客が群がっているところの多くがスイートポテトや大学いも、そして銘柄いもを使った焼き芋の売り場であることが。

 戦前から戦後の経済の高度成長が始まるまで、サツマイモは米が取れない地域や米があっても貧しくて買えない人のものとされ、格の低いたべものとされてきた。それがいまでは豊かになった食生活のデザートの1つにまでなっている。サツマイモもずいぶん出世したものだ。

 

 

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おしゃべりクイズでの大失敗(平成17年2月14日)

 NHKラジオ第1放送の毎週月曜の夜に「おしゃべりクイズ疑問の館」がある。今夜はその第219回。常連ゲストは脚本家のジェームス三木さん、俳優の佐藤正宏さん、女優の和泉雅子さん、そして声楽家の島田裕子さんの四人。司会は同館主人の内多勝康アナウンサー。この館では毎回、特別ゲストを招く。今回のそれはサツマイモのことに詳しい人ということでわたしが招かれた。

 内多さんが「今日はバレンタインデーということで、チョコレートとは一味ちがうあま〜いものを用意しました。寒い冬にたべたくなるものと言ったら」と口火を切ったとたんに、答えがいっせいにでた。「石焼き芋だ」。「あれはうまい」などなどと。

 それからしばらく内多さんに問われるままにわたしが焼き宇の歴史などをしゃべった。それが終って、わたしからゲストのみなさんへのクイズ出題となった。こっちで用意したのはサツマイモについての4問。まずは石焼き芋からで、こう言った。

 「石焼き芋の屋台の多くは人の多い駅前や公園の入り口、大病院の門の前などに現われます。そこへきた焼芋屋さんがまずチェックすることはどういうことでしょう」

 するとそのとたんにゲストが口々にこう言つた。「風向きだろう」。「いい香りで客の気を引きたいものね」。「それなら人のいるところからちょっと離れた風上だ」

 これには参った。こっちは難問のつもりで、ヒントまで用意していたのだから。それをあまりにもかんたんに当てられてしまい、あわててしまった。「そうです、その通り」と言わなければならないのに、それが一瞬遅れてしまった。気の早い連中はそれを待ってはくれなかった。またまた早口でいっせいにしゃべりだした。

 「わかった。そこにいる女性の割合ではないの? 男の人より女の人のほうが買うものね」。「いや、焼き芋の皮だ。たべ粕が道にたくさん落ちているかどうかだ」。「粕が多いということは客が多いところということになる。いい場所だ」。「そうとも限らないんじゃあない。ここでやっていた同業の人が売れなくなってほかへ行った跡ということにもなるわ」

 さすがはおしやべりの達人たちだ、おもしろい話がポンポンでてくる。こっちはそれを聞いていて嬉しくなってしまった。でもこのままでは収捨がつかなくなる。内多さんが「井上さん、そろそろ正解を」と促してくれた。

 わたしはあやまるしかなかった。「ごめんなさい。わたしが用意していた正解は、みなさん方が最初に言い当てられた『風向き』だけでした。その時、即座に『ご明解』としなければならながったのに、上ってしまっていてそれが出そびれてしまいました。それで話が思いがけない方にどんどん行ってしまいました。

 でもこの大失敗のおかげで、こっちはいい勉強をさせていただくことができました。それは正解は一つだけではなく、いくつもあるということを教えていただけたことです。みなさんのお語を伺っていて、そのどれもが正解だと思いました」

 それを受けて内多アナウンサーが上手に締めくくってくれた。「今夜は井上さんの特別の気配りで全員の答が正解となりました。よかったですね」

 こうして第1問がやっと終った。

 

 

 

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女性のいも好きのわけ(平成17年3月3日)

 サツマイモは女性の好物だが、男性にとってはどうということもないものになっている。そのわけを知りたくて、これまでいろんな人の考えを聞かせてもらってきた。

 今日、東京から60代の女性5人のグループがきてくれた。その説がおもしろかったので書き留めた。

 「女はおかしが大好き。それもあまいものが。だからおさつは大好き」

 「男の人って、おかしをあまりたべない。たべるのはご飯。おさつはあまいから、そのご飯のおかずにもならない」

 「そうそう、おさつのおかずは少いわね。天ぷらと大学いもぐらいしかない。これではおさつをたべる機会はないわ」

 

 

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