XII 我が国の『じゃがいも』に関する施策と今後の課題

1.生産振興対策
(1)強い農業づくり交付金
  この事業は、食料・農業・農村基本法に基づき新たに策定された「食料・農業・農村基本計画」において示された
 
  • 多様化・高度化している消費者・実需者ニーズに即した農業生産の推進
  • 農業経営の担い手となるべき農業経営の育成・確保を図り、効率的かつ安定的な農業経営が地域の農業生産の相当部分を担う農業構造の確立
  • 安全・安心で効率的な市場流通システムの確立、産物輸出を促進するための普及宣伝の強化

  の課題に対処するため、農畜産物の高品質・高付加価値化、低コスト化、認定農業者等担い手の育成・確保、担い手に対する農地利用集積の促進及び食品流通の合理化等地域における生産・経営から流通・消費までの対策を総合的に推進することとしていおり、次のような事業内容となっています。

@ 推進事業

協議会の開催、調査の実施、実証・試験の実施等

A 整備事業

小規模土地基盤整備、共同利用施設整備、共同利用機械整備


 なお、この事業は、地域が抱える問題の明確化を図る観点から、事業実施計画において課題解決のための具体的な成果目標を定めるとともに、目標年度の翌年度において、定められた成果目標の達成状況について評価を行うこととなっています。また、都道府県知事は、地域独自の取組(地域提案)を交付金総額の20%の範囲内で実施できることとなっています。

(2)農業・食品産業競争力強化支援事業

従来の補助事業の体系では、都道府県域を超えた取組に迅速に対応することができなくなっていることや、低コスト化・高付加価値化等を推進するためには、革新的な新技術を核として、従来の生産システムを大胆に変更するような新たなシズテムの導入が必要になっていることから、国が直接、事業実施主体を支援し、競争力のある産地及び担い手を育成し、国産農産物の競争力強化を図ることとしており、次のような事業内容となっています。

@ 産地・消費者サイド広域連携事業

産地・生産者が都道府県域を超えて実需者と結びつくなど、農畜産物の安定的な生産供給体制の確立を図るための広域的な取組を行う事業

A 産地間広域連携・広域的流通拠点事業

単独の産地・生産者では困難な、食品産業等の周年需要に対応するための産地・生産者間の連携等都道府県域を超えた広域的な取組を行う事業

B 高モデル・先進型事業

全国で初めての取組となるような先進性が極めて高く全国のモデルとなる産地育成に向けた取組を行う事業

 

(3)地域特産農業指導推進事業
  需要が拡大している加工食品用ばれいしょに適性の高い新品種の開発を加速化するため、ばれいしょ加工適性研究会の設置・運営を行う事業です。

(4)高生産性地域輪作システム構築事業
  北海道畑作において、秋まき小麦の前作として作付けされているばれいしょの大幅な省力化を図るため、日本におけるソイルコンディショニング栽培技術確立のための国内の土壌・気象条件に適合した作業機の開発や栽培技術の確立、小粒塊茎生産技術の開発及びこれら技術の現地実証を行う事業です。

事業目標:

加工用ばれいしょ生産における
単位面積当たり労働時間を慣行技術から40%削減
単位数量当たり生産費を10%削減

(5)特定畑作物等緊急対策事業
 新たな食料・農業・農村基本計画では、いも類は、食品産業との連携の強化により加工食品用の生産を拡大することが解決すべき課題とされています。この課題を解決するため、次のような内容の事業を行うことになっています。

@ 流通・消費動向等調査事業

全国レベルでの検討・指導体制の下で、実需者ニーズの集約による全体需要の把握やこれに沿った適切な品種別、用途別生産の誘導、生産者・実需者連携の優良事例の収集・普及等により、国内消費動向に対応できる産地供給体制の確立を推進

A 知識啓発事業

広報活動等によるじゃがいもの消費宣伝及び国産品の良さに関する知識啓発を実施

B 新規用途開発普及事業

新規用途の開発・普及等により、実需者ニーズの開拓を促進

 

2.今後の課題
(1)じゃがいもの需要はマクロには増加基調で推移していますし、近年は安全・自然食品としてのイメージや食物繊維・ビタミン等の健康イメージが若者層にも定着しています。我が国の1人・1年当たりのじゃいもの消費量は粗食料ベースで17s程度で、ヨーロッパ諸国と比較するとまだまだ低い水準です。ですから食文化の違いを考慮してもなお、消費者の健康志向を背景に全体の需要はさらに伸びる可能性が高いのです。

(2)しかしながら、分野別の需給動向を見ると青果用は食生活の簡便志向から減少傾向にあるほか、でん粉原料用については、でん粉の需要が減少傾向にあることに加えて、安価な化工でん粉が増加し、国産のじゃがいもでん粉の需要が減少しています。さらに、需要の増加している加工食品用の分野でも、国産比率は大きく低下しています。
 一方、生産面では、北海道では大型機械一貫作業体系が実現されているものの、都府県では機械化が十分でなく、農家の高齢化もあって作付面積、生産量とも減少しつつあります。

(3)このような状況の中で消費者や実需者のニーズに的確に応えながら国内生産を維持・ 拡大していくためには、新たな需要を掘り起こしていくことが必要です。このためには

  • 生産、流通、加工の各段階における低コスト化・合理化
  • 青果用の優良品種や加工適性品種の育成とその普及
  • 加工食品用についての新製品や新規用途の開発による需要確保
  • 青果用についての有機栽培などによる消費者の安全志向、健康志向への対応

等を展開することが緊急の課題となっています。

(4)特に需要の掘り起こしのためには、例えば需要の伸びが期待できる外食産業向けの新品種の普及が重要なのですが、これらの新品種に関するユーザーと生産者双方へのPRを徹底すること、さらには様々な料理のメニュー、新商品を開発して新しい「じゃがいも食文化」を築くことが必要です。

(5)また、このためには生産農家が新品種に取組もうとしても何年も待たなければ種いもを入手できないという問題もありますので、これまでの硬直的なシステムを改善する必要がありますし、マイクロチューバーなどの新技術についても積極的に取組んで行く必要があります。さらに、品種改良から普及にいたる過程で、ユーザーの評価を幅広く受け入れるような仕組みも必要でしょう。

(6)さらに、流通コストの低減も大きな課題です。じゃがいもは重量作物ですので、運賃がかさみますし、発芽(萌芽)を抑制するために低温貯蔵が必要です。しかしながら生産者価格と消費者価格の差が、同じ重量野菜であるニンジンや大根に比べても大きいという現状からもわかるように、流通コストの低減が大きな課題となっています。このように、国内生産を維持するためには生産、流通、消費のそれぞれの段階での構造改革を強力に展開することが求められているのです。