JRT 日本いも類研究会(Japanese society of root and tuber crops)
ニュースレターNo.7 1997/7/30



お知らせ

日本いも類研究会のホームページJRTWebを公開しました。いも類情報の提供とおいもファンや関係者の交流の場として運営していきます。

Eメールinfo@jrt.gr.jp / URL http://www.jrt.gr.jp/

平成9年度会費納入がお済みでない方は「銀行振込」または「郵便振替」で払い込みをお願いします。
(普通会員:\2000、賛助会員:1口 \20000)
銀行振込  常陽銀行 研究学園都市支店 普通口座=1449951 名義=JRTつくば事務所

郵便振替  郵振口座=00180−7−362899 口座名義=JRTつくば事務所
会費の領収証は、「郵便振替受領証」、「銀行振込金受取書」をもって代えさせていただきます。


■いも類トピックス

○ いも類に関する統計資料

 甘しょ及び馬鈴しょについては、農林水産省統計情報部から作付面積や収穫量などの作柄、でん粉原料用についての生産費、また、大臣官房調査課から食料需給表として輸出入や用途別の消費量などが、毎年、ほぼ同じ時期に公表されています。FAXニュースレターでは、それらのデータを要約して提供します。

《概ねの公表スケジュール》
   6月 前年産の野菜の作付面積、収穫量及び出荷量(馬鈴しょを含む)
   9月 当該年の8月現在の春植馬鈴しょの予想収穫量(北海道)
       〃   〃  野菜の生産出荷予想(北海道の春植馬鈴しょ)
  10月   〃 9月現在の甘しょの全国作付面積及び主産県予想収穫量
  10月 前年産の原料用甘しょ・馬鈴しょ生産費
  10月 当該年の春野菜の作付面積、収穫量及び出荷量(馬鈴しょを含む)
  11月 当該年の春植馬鈴しょの作付面積、収穫量及び出荷量(北海道)
  12月 当該年の甘しょの収穫量
12〜 1月 食料需給表(速報版:1昨年のデータ)
3月   〃  (確定値:   〃   )
 
○ 種馬鈴しょでJA全農新たに5品種 ー日本農業新聞(7/17)よりー
 JA全農は、これまで20年以上、取扱品種を5品種(男爵薯、メークイン、農林1号、トヨシロ、ワセシロ)に固定していたが、新品種を要望する動きと多用化した需要に対応するために、府県から要望の強かったキタアカリ、とうや、ムサマル、ベニアカリ、ホッカイコガネの5品種を97年から都府県に提供することとした。各品種とも、数量はまだ少ないが、反響が大きければ更に量や品種を増やす予定。



■いも類製品の需要(1)


 北海道アグリフーズ株式会社

 

北海道アグリ・フーズ株式会社 代表取締役 大塚康晴

 北海道アグリ・フーズ株式会社は、住友商事鰍ェ1990年に出資して設立した、日本で初のジャガイモチルド加工販売のベンチャー企業です。昨年、設立して6年目にして黒字化、日本で唯一のチルド(冷蔵)ポテト専業加工販売会社として業績を伸張させている。業務用が主体のため、一般消費者は当社の名前を知らないが、日本マクドナルド、デニーズ、不二家レストラン、白木屋、吉野屋、アサヒビールシステム等数多くの大手外食レストランや、総菜メーカー向けに調理殺菌済みの製品を販売している。昨年は、ポテトサラダ用素材に使うプレサラダを開発し、サミットストアはじめイトーヨーカドー、東急ストア等スーパーに直接販売を開始した。 この当社に7月6日(日)ペルーのフジモリ大統領が訪問された。背景は、大統領より、北海道産の馬鈴薯を原料とする先進食品加工会社を訪問されたいとの意向を受け、北海道知事から当社に要請があったもの。
 フジモリ大統領は、1984-89年ペルーの国立農科大学長、1987-89年ペルー国立大学協会会長を務められたあと、1990年日系人として初めてペルー共和国大統領に就任された。また、ペルーはジャガイモの原産国でもあり、首都リマには世界で最も進んだ品種の保存及び改良の研究機関のInternational Potato Centerがある。
 大統領は、当社に到着されると、挨拶はそこそこに終わらされ、当方が用意したレジメにすぐ目を通され、要点をついた質問を実務的に矢継ぎ早に行われた。ご案内した工場では原料倉庫から最終製品の出荷まで全てを回られ、製造ラインではパートさんの中に入り、加工原料を実際に手に取り、男爵イモの特徴や品質が劣化する条件にまで質問されたのには驚いた。事務所内に戻り、最後の質疑応答に入ると、今度は、商品の末端販売価格から主要マーケット状況、日本の家庭の主婦の家庭料理にまで話が及んだ。最後に、工場内で被った帽子を記念に欲しいと言われ差し上げた所、外に待機していた大勢の社員とともにこの帽子を気さくに被って記念写真に応じられた。
 短い準備期間で十分なおもてなしは出来なかったものの、今回の大統領の当社訪問がペルーとの一層の友好につながれば幸いであり、これを機会に一層広げて戴きたい。




■いも類関連機関紹介(2)

 農業研究センター作物開発部甘しょ育種研究室
 

農業研究センター作物開発部甘しょ育種研究室 小巻 克巳

 私たちの研究室はいろんな研究機関が集まっているつくば市にあります。ただし、試験圃場は10km離れた隣村の谷和原村にありますから、毎日圃場に通勤しているような感じです。研究室は室長の小巻、研究員の片山と田宮の3人です。関東東海地域のサツマイモはほとんどが青果用で、蒸し切干用が一部を占めてるという状況ですから、品種育成の対象は青果用と蒸し切干用が中心になります。青果用は田宮が、蒸し切干用は片山が担当しています。小巻はといいますと、遊んでいるわけではなく、品種育成のもととなる遺伝資源の保存・評価を担当しています。
これまで多くの品種を育成してきていますが、代表的なものとして「ベニアズマ」が上げられます。昭和59年に育成されて以来年々栽培が増加し、今では一番の面積シェアを誇っています。この他蒸し切干用として、少々古いのですが「タマユタカ」(昭和35年育成)があります。食味がよい「ベニコマチ」も育成しましたが、作りにくさが災いしてあまり栽培されなくなってしまいました。最近では青果用に「フサベニ」、蒸し切干用に「ヘルシーレッド」、でん粉原料用に「シロサツマ」、「ハイスターチ」、「サツマスターチ」、特別なものとして葉柄を野菜として利用する「エレガントサマー」を育成していますが、残念ながら、「シロサツマ」を除いて栽培面積は多くありません。
「ベニアズマ」が育成されて13年、「タマユタカ」に至ってはもう37年も経っていますから、いろんな問題点がでてきて、これらに代わる品種を早く出してほしいという要望が強くなってきています。一所懸命やっているのですが、なかなか要望に応えられるものがでてこなくて、焦り気味です。今少しの時間を頂いて、自信を持ってお勧めできるものを送り出したいと考えています。
品種育成以外にも、サツマイモの機能性に着目した品種を育成するための研究や、今はやりのDNAに関する研究も始めています。研究室の方に来ていただけば、実験施設などご案内します。昭和61年に千葉県の四街道市からつくば市に移転したとき素晴らしい施設が整備されました。世界的に見てもサツマイモ育種ではこれ以上のものはないと思いますので是非お立ち寄り下さい。



リレーエッセイ・・すてきなイモ野郎たち(2)

渡辺克司氏の甘しょ論文を読んで


サツマイモ資料館 井上 浩

1、はじめに
 我が国の現在の甘しょ問題を把握し、将来を予測したり、対策を立てる事の重要性は、甘しょ関係者ならだれでも感じている。特にわが国最大の甘しょ生産県であるだけでなく、同県特有の難問を抱えている鹿児島県の場合は切実だ。
こうした要請に応える為に、最近、地元の鹿児島経済大学経済学部助教授、渡辺克司氏が「甘しょの用途別生産・流通構造の現状と今後の課題」を発表された(同大学「地域総合研究』24巻2号、1997年3月)。啓発されることの多い優れたものなので、めぼしい視点をまず紹介させてもらうことにしたい。そのあとで私 の見聞と感想をいくつか付け加えさせてもらうことにしたい。というのは渡辺氏は今回は甘しょ問題の整理と分析にまず当たり、鹿児島県問題の対策は次の機会に譲るとされている。その時の参考に少しでもなればと思ったからである。
 
2、甘しょ問題と米問題の違い
 渡辺氏が基本資料として使われているのは農林水産省農産園芸局の「いも類の生産流通に関する資料」だ。毎年出ているもので、甘しょと馬鈴しょに関する様々な統計資料が載っている。同氏はそれを「いも類の資料』とされているので以下、それにならう事にする。
  同資料では甘しょの用途を、農家自家用、飼料用、種子用、市場販売用、加工食品用、でん粉原料用、アルコール用の7つに分けている。この中で今一番問題なのは、でん粉原料用、加工食品用、そして市場販売用だ。甘しょはかってはいたるところで作られていた。それが最近は限られた所で用途別に集中的、専門的に作られている。
「いも類の資料』によると1994年のわが国の甘しょ総生産量は120万トン。うち用途別で最大は「市場販売用」で50万トン。大産地は千葉県(15万トン)と茨城県(14万トン)。関東の2県で全体の6割近くを占めている。一方、鹿児島県は3万トンで意外なほど少ない。2位は「でん粉原料用」。30万トン近くあるが、鹿児島県はダントツで26万トン。9割近くを1県で占める。3位は「加工食品用」で9万トン。鹿児島県(4万トン)と茨城県(3万トン弱)で7割以上。4位はアルコール用で7万トン強。これも鹿児島県(5万トン強)と宮崎県(1万5千トン)で9割にも達する。
こうした実情から渡辺氏は「甘しょ問題」は「米問題」のように全国的な問題にならない。限られた産地だけの問題にされてしまうと指摘されている。まったくその通りで、甘しょ問題はその自覚なしには取り組めない。
 
3、原料農作物の宿命
渡辺氏は用途別の将来で、最もシビアなのは「でん粉原料用」だとされている。甘しょを「原料作物」として作る以上、世界市場とのリンクは避けられないからだ。そのことは、でん粉原料用のいもが長年にわたって減り続けていることからも分かる。
 
4、掴みにくい甘しょ加工品の輸入量
 甘しょにはアリモドキゾウムシとイモゾウムシという大害虫がいる。原産地は前者はインド、後者は西インドとされている。ともに熱帯、亜熱帯に広く分布し、さらに温帯への侵入を狙っている。世界の甘しょの8割以上を生産している中国も、華南に侵入し、日本でも沖縄にすでに侵入してしまっている。そのためわが国では外国及び沖縄からの「生いも」の輸移入を禁止してきた。(注)もっとも加工品の輸入は問題がないので、中国などから、いもあん(ペースト)、蒸しいも、大学いも、蒸し切り干しなどが入ってきている。一方、「いもの資料」 によると鹿児島県の加工品の中心は惣菜、大学いも、焼きいもであり、茨城県のそれは蒸し切り干しだ。
 注:沖縄からの「生いも」の移動については、平成7年から、蒸熱処理を行えば可能となっている。
でん粉いも対策として加工食品用、市場販売用への転換を図っている鹿児島県にとっても、わが国の蒸し切り干しの8割以上を生産している茨域県にとっても、輸入品との厳しい競争は避けるられなくなっている。そこで問題になるのは輸入品の量と価格だが、困ったことに掴みにくい。日本の貿易規模から見ると、その量や金額は問題にならないようで、それが分かる統計類が作成されていないからだ。
 
5、千葉県と鹿児島県
 上述の様に「生いも」の輸入はできないので、本土の甘しょ農家にとって市場販売用(青果用)甘しょの生産は有利に見える。ただこれも生やさしいものではない。渡辺氏は日本最大の市場販売用甘しょ生産県、千葉県と、これから青果用のウェイトをもっと高めようとしている鹿児島県と比較し、そこから鹿児島県の問題点を探ろうとされている。
 「いも類の資料」によると、わが国の市場販売用甘しょの生産量は1960年代から今日まで30〜40万トンで推移している。ということは需要はその辺までで、今後の伸びはあまり期待できないということになろう。同氏によれば今日、産地として知られているところは1960年代になって「でん粉原料用」が難しくなり始めたとき、いちはやく市場販売用への転換を図り、成功したところとなる。千葉、茨城、静岡などの諸県がそれだ。中でも大消費地、東京に近接する千葉、茨城の両県は1970年代の後半から急激に伸び、大産地になった。
他方、鹿児島県はでん粉原料用からの転換が出遅れた。そのうえ大市場である大阪は高知県、徳島県などの四国勢に押さえられてしまっているし、東京は遠い。しかも産地間の品質競争が激しいから、でん粉原料用いもをつくるような安易な考えでは、とてもうまくいくものではない。市場販売用甘しょの産地として育ち、県のプランド品としての認定をうけるまでになったところは、今のところ頴娃(えい)町と知覧町ぐらいしかない。それはこうした様々な問題が複雑にからみあっているからであろう。
 
6 渡辺論文に啓発されて
渡辺氏の今後の研究の一助にでもなればと思い、わたしの見聞と感想のいくつかを挙げさせてもらうことにしたい。

 1)今のわが国では甘しょ問題は国全体の問題にはなりにくい。それどころか県全体の問題にさえなりにくい。甘しょで県全体が動けるのは鹿児島県ぐらいのものだ。他の県では、市町村ごとかその連合で動くしかない。それだけに鹿児島県が果たしてきた役割と効果は大きい。同県は10年ほど前から、でん粉原料用いもを加工食品用いも、市場販売用いもに転換するための手を積極的に打ってきた。
1986年から県下の業者を対象に「さつまいも食品コンクール」を開始、今も続けている。1993年には鹿児島市内に甘しょ情報の発信基地、「さつまいもの館」を作った。また同年から無料配布の「さつまいも物知り読本、「I.M.O.」の発行を開始、年1冊のペースで5冊を出した。こうした諸事業は本来は鹿児島県民の為のものだったが、情報はたちまち全国に伝わった。それまで情報に飢えていた関係者がどれほど喜び、参考にしたかわからない。その意味で同県が日本の甘しょの発展と甘しょ文化の向上に尽くした功績は計り知れないものがある。鹿児島県はそのことに誇りを持ち、さらにがんばって欲しい。

 2)甘しょ加工品の輸入で問題になるのは、量と価格だ。産地がひたちなか市と東海村の局地に限定されているため、情報を集めやすい茨城県の蒸し切りぼしについてそのことを業者の人達に聞いてみた。
昭和の終りごろから中国産の干しいもが入って来るようになった。初めは品質が悪かったが、だんだん良くなり、今では国産と見分けのつかないものまである。茨域産の干しいもは年6000トン。最近の輸入量は、それとほぼ同じ。価格はいろいろだが、国産の半値見当とのことだった。南九州の甘しょを守り、発展させようと情熱的に取り組まれている農林水産省九州農業試験場の山川 理先生に先日輸入品対策を伺った。するとユニークな先生はこともなげにこう言われた。「中国と同じ作り方をしたら、かないっこありませんよ。人件費がまったく違うんですから。こっちは向こうにない方法でやることを考えるしかありません。それ用の機械を考え、作ることが必要です。それも役所だけでやったって駄目。民間の関係者と共同で力を合わせてやらないと。」

 3)市場販売用甘しょの産地作りには土地ごとに諸条件の違いがあり、一筋縄では行かない。したがって産地化を目指す所は、できるだけ多くの先進地を見る必要がある。例えば「鳴門金時」で有名な鳴門でこんな話しを聞いたことがある。「うちらが青果用のサツマイモとダイコンの年2作で村おこしを始めた時、周りの人達からこう笑われたものです。「みんなが重量野菜から軽量野菜に移ろうとしているときに、なんでそんな馬鹿なことをするの?と」また、1993年に第23回日本農業賞の大賞をとった宮崎県串間市の大束(おおつか)農協ではこう聞いた。Γよく、なにか特別のことをしているのかと聞かれるが、何もやっていない。畑に堆肥を十分入れるという当たり前のことをやってるだけだ。うちでは牛糞で堆肥をつくる施設をつくり、堆肥を全組合員の 畑に入れている。連作障害はこれで防げるよ」

 4)鹿児島市に本社のある南日本新聞の連載もの、「さつまいも新世紀」は1992年から1年以上も続いた。新聞にしょっちゅう「さつまいも」という文字が踊っていることくらい、関係者にとって励みになることはない。当時、同社の経済部長で、その企画にもタッチされていた尾辻隆一氏から、先ロ、それが長く続いたわけを伺うことができた。「鹿児島のからいもを守りたいと言う事で、特集を考えたのですが、それだけではネタがそうはあるものではありません。そこで世界の様子から入る事になり、記者をアメリカや中国へ出しました。するとそれは21世紀には無くてはならないもので、日本でも本気で守らなければならないものであることが明らかになってきました。世界を見れば、日本の産地もたくさん見たくなります。そして最後に鹿児島のことを取り上げることにしました。そうなるとネタはいくらでもあります。それで長く続けるごとができたのです。」



JRTニュースレター編集委員会より

 ご意見・投稿は、FAX 01527−5−2012 まで。

 ご多忙中、多方面の方々より原稿をいただきました。紙面をお借りしてお礼申し上げます。7号の編集は下記メンバーにより行われました。全国各地に分散した編集委員会ですが、インターネットメールとファクシミリを駆使し編集会議を行っています。皆様からのご意見や投稿をお待ちしています。

林 一雄(上武大学)、井上 浩(サツマイモ記念館)、中谷 誠(九州農試)
渡邊和夫(近畿大学)、矢野哲男(農水省畑作振興課)、中江拓司(美幌町農家)


日本いも類研究会 ニュースレター第7号 1997.7.30 (計4枚) 次回の発行は8月の予定です。