JRT 日本いも類研究会(Japanese society of root and tuber crops)     ニュースレターNo.8 1997/9/2

日本いも類研究会は、インターネットWWWでいも類最新情報の提供を行っています。また、いも類Q&Aコーナーを設け、Eメールで随時質問の受け付けを行っています。JRTWeb  http://www.jrt.gr.jp/

 

イベント 甘しょ新規製品の展示−9月24〜26日に開催

「’97食品開発展」において、JA都城、熊本製粉、ミクニテックが共同で甘しょ新規製品(パウダー、ジュース)を展示いたしますので、ご見学ください。

日時:平成9年 9月24日〜26日

場所:東京国際展示場「東京ビックサイト」第2ホール

 

 

 農水省の試験研究機関では、いも類を含む主要な作物の育種が重要なテーマとなっています。そして、特性が優秀で普及すべきものに名前と農林番号を付けています。これを命名登録とよんでおり、昭和4年から現在までに78作物1439品種に及んでいます。

この制度は、品種としての権利保護を目的として行われる種苗法に基づく品種登録とは異なるもので、例年、夏作物と冬作物に分けて年に2回行われます。今回は、17作物38品種が登録されましたが、その中には馬鈴しょ2品種、甘しょ1品種が含まれています。

 

種別

新品種の登録名称

育成地

甘しょ

ジェイレッド<農林49号>

九州農業試験場

馬鈴しょ

花標津(はなしべつ)<農林38号>

普賢丸(ふげんまる)<農林39号>

北海道立根釧農業試験場

長崎県総合農業試験場愛野馬鈴薯支場

 

 

「ジェイレッド」−PRメッセージ−

九州農業試験場 畑地利用部甘しょ育種研究室 山川 理

 

とうとう出ました!ジュース用サツマイモ品種「ジェイレッド」

ジェイレッドはサツマイモの需要拡大の切り札として九州農業試験場甘しょ育種研究室で開発した新しい品種です。でん粉含量が低く、β-カロテンがニンジンより多いためジュース用に最適です。収量性も高く、マルチ栽培では4t/10a位はとれます。でん粉含量がジャガイモ並に低いのでジュース用以外にもサラダ、コロッケ、スープなど色々な料理やフレンチフライやチップスなどスナック食品の材料としても有望です。さらに現在、アントシアニンやフラボノイドを多量に含む紫、黄色のジュース用サツマイモ品種の開発が進んでいます。

「ジェイレッド」の名称は、日本(Japan)で開発された初めてのジュース(juice)用の品種であることからジェイ、肉色がオレンジ(赤)であることからレッド、すなわちジェイレッド(英語ではJ−Red)と名付けられました。

 

「花標津」−PRメッセージ−

北海道立根釧農業試験場 研究部馬鈴しょ科 千田圭一

疫病に強く減農薬が可能なジャガイモ新品種「花標津(はなしべつ)」

 ばれいしょ新品種「根育29号」の品種名は、「花標津(はなしべつ)」に決定しました。

北海道立根釧農業試験場で育成された、ばれいしょの新品種が農林水産省により「花標津(はなしべつ)」と命名され、ばれいしょ農林38号として登録されました。名称候補は、育成場である根釧農試の職員はもちろん、試験にたずさわった農試関係者や道庁・支庁の農政担当者、そして今回は、日本いも類研究会のニュースレター、Potato Web(インターネット)、NIFTY−Serve(パソコン通信)などを通じて一般の方々からも募集いたしました。こうして集まった150近くの名称の中から15個の候補に絞り(育成者といえども命名にはここまでしか関与できません)、農林水産省の命名登録審査を経て命名されました。

 名称は、この品種の隠れた(?)特長である花の美しさと、育成地の地名(正確には隣町)にちなんで付けられました。なお、この名前はNIFTY−Serveから電子メールで応募していただいたものです。千葉県のハンドルネーム<地人>さん、ありがとうございました。お約束の賞品は、現在もすくすくと生育を続けておりますのでもう少々お待ち下さい!残念ながら採用にならなかった応募者の皆様にも、この場をお借りして心より御礼申し上げます。

疫病という病気に大変強く、農薬使用を従来の品種より著しく減らすことが可能な新品種「花標津(はなしべつ)」をよろしくお願いします。

 

「普賢丸」−PRメッセージ−

長崎県総合農業試験場愛野馬鈴薯支場 馬鈴薯育種科 茶谷正孝

 普賢丸は、ポテトチップス用品種の「アトランチック」とCIPの耐病性系統「P−7」の交配組み合わせから選抜、育成した品種である。暖地二期作用としては初めてジャガイモシストセンチュウ抵抗性を有し、葉巻病やYモザイク病にも比較的強い。草型やいもの外観は「とうや」に似ている。いもは球形で二次生長がほとんどなく、粒揃いも良い。いもの肥大始期が早いため早掘りでは多収だが、後半には「ニシユタカ」や「デジマ」に逆転される。黄皮・淡黄肉で、煮崩れは少ない。肉質は中〜やや粉質で、食味は「デジマ」並である。マッシュポテトの色が鮮やかで、バターとの相性も良い。どちらかと言うと洋風の料理に適するが、粉吹きや揚げジャガもおいしい。

 

■いも類製品の需要(2)  馬鈴しょ業務用新品種のサンプル評価結果について

農水省畑作振興課いも類班 一ノ瀬今朝一

1.昨年度、UR関連畑作物対策による需要確保対策事業の中で、近年育成された調理適性、加工適性に優れた馬鈴しょの新品種を広くユーザーに提供し、評価を得るという試みを行いました。

2.調査対象品種は、キタアカリ、とうや、ムサマル、マチルダ、ベニアカリ、アイノアカの6品種で、これを十勝や中標津及び長崎県の生産者から入手し、外食産業や加工食品産業のユーザー30社に提供し、現在使用している品種との比較を中心に20社からレポートを提出していただいています。

以下、品種別にその概要をレポートします。

キタアカリ

○味が濃くホクホクしている。水分が少ないので、コロッケ、肉じゃがなどに適している。

○ホクホク感があり、マヨネーズ等と混ぜてもベトベトせず非常に美味しい。

○今までのジャガイモにない良い香りがあり、黄色の肉色と塩分が良くマッチして美味しい。

○肉ジャガに使うと甘味があり美味しい。

▲味はおとなしいが旨みが少ない。

▲食感が軟らかいことから使用しにくい。

▲味は良いがフライドポテトにした状態では型崩れがややある。

 

とうや

○蒸しいもの肉色は黄色が鮮やで、煮崩れせず喉ごしが良く、クセがない。肉質が滑らかで食感も良く、煮物に向く。

○凸凹が少なく皮が剥きやすい。カット後、流水なしでも変色しないので作業工程が短縮できる。煮物料理は煮崩れ無く味が良い。(肉じゃが、南蛮煮、おでん、シチュー、ポトフなど)。サラダ料理にも味が馴染みやすい。焼き物、炒め物料理は全体的に味も良く、崩れないので調理しやすい。(リヨン風ポテト、ベイクドポテト、コキール、スタフドポテトなど)。スープ、ポタージュにも食味良い。

▲肉質が軟らかくて水っぽいく、加工性、食感共に劣る。    

▲色ムラがある。フライドポテトにした状態では型崩れは余り無いが、特に味が良い訳ではない。

▲大粒で芽も小さく処理しやすいが、皮はやや剥きにくい。粉質でホクホクしているが芋の味、香りがやや弱い。

▲あっさり気味だが甘みがあって美味しい。ただ柔らかく水っぽい。コロッケ用には使いづらい。

 

ムサマル

○従来の品種より、ずっと垢ぬけたポテトチップとフレンチフライになる。

○フライドポテトにするとホクホク、中が軟らかく外が固い。

○煮物として使用。型は良好でとうや同様、型が一定するので出来上がりはきれい。肉質は内部が柔らかく表面が少し固いような気がした。

○フライ料理はホクホク感があり、食味良い。肉料理の付き合わせとして使用すると相性が良い。

▲色が褐変しやすい、揚げた後も同様で使用しにくい。

▲加工性、食感ホクホク性に富み、粉ふきであるが、甘みが他品種に対して劣る。

▲蒸した状態では粉がふいているものの、他の品種よりも水っぽい。フライドポテトにした状態では水っぽく、すぐに崩れてしまう。

▲澱粉価が高くホクホクしているが風味が悪い。コロッケには使いづらい。

 

マチルダ

○煮崩れもなく、芽も浅く肉色も淡い黄色で、2つ切りでポテトフライには良い。

○コロッケにすると甘味があり、癖がなく食べやすい。

○調理後崩れにくい、味も甘味があり、色も鮮やかである。冷凍ホールポテトで使用している。

○加工性、食感、ホクホク性等に富み、粉ふき性が優れている。

▲粉質でホクホクしており、甘み、旨みがあって美味しいが7分程度のボイルで急激に崩れ始め、扱いにくい。冷凍にも弱く崩れが出やすい。

 

ベニアカリ

○コロッケとして使用。非常に水分が少なく、つぶす時間も機械の通りも良い。ホクホク感があり、大変美味しい。油切れもよく、貯蔵に耐えられればサラダ、コロッケにはたいへん向いていると思われる。

○蒸した状態では粉ふき、色も白できれい。味もくせが無く良い。フライドポテトにした状態では、型崩れは全く見られず、味もなんにでも合う。コロッケにしてみると、色が真っ白で中に入る具によっては使えそうだ。

○ホクホクしている。栗の様な風味で生食用、プレーンタイプに有望。

▲加工性、食感劣る。ホクホク性中位

 

アイノアカ

○食味は良く、デジマやニシユタカに匹敵する。煮崩れもないので肉ジャガには向いている。

○肉ジャガにするとねっとりしていて、軟らかい。

○赤味を帯びて見た目が美しい。味はやや薄めだが、煮崩れは少ない。フライドポテト、きんぴらなどに適していると思われる。

○加工過程で、凸凹が少なく皮が剥きやすい。さつまいもや栗を食べているような食味。焼き物、炒め物料理は全体的に崩れなく調理しやすい、芋自体の味をいかした料理が作れる。

▲蒸した状態では粉ふき、皮もきれいな赤だったが、味は今回のサンプルの中で一番良くなかった。フライドポテトも、いも臭さが強く、プレーンはもちろん塩味でもおいしくない。

▲コロッケとして使用。粒揃いで皮むき(機械)、蒸す時間が一定しているので作業面では非常にやりやすい。味は肉質が柔らかいせいか、ホクホク感に欠ける様。

▲加工性、食感が劣り、水っぽく甘みがない。

 

総評・所感・その他

○キタアカリは汎用性がありネーミングの良さもあって利用できそうである。サラダではとうや、コロッケではマチルダ、フライドポテトではムサマルが適性あり。

○加工性・食感共に優れ、粉ふき感から見るとキタアカリ・ムサマル・マチルダの3品種が他品種に対して優れているが着色種という点が難点。二次加工又は、消費者の嗜好性・量販店の動向を探究する必要がある。生産面から見るとマチルダは、無農薬・減農薬栽培が可能な品種であり、加工業から見た継続的製造販売の可能性等を検討したい。

○総合的には、とうやが加工しやすくレトルト、冷凍にも適性があり良いと思われる。味にもう少し芋の甘み、旨みが欲しい。マチルダは味が良く、レトルト適性はあるので、加工しにくさを除けばレトルトには向いていると思われる。冷凍は良くない。

○今回の調理試験では、全体的に男爵薯より良好な評価は得られなかったが各品種の特徴を生かした調理法で、今後、研究・開発に役立てたい。

 

■馬鈴しょの市況(3)  今年の「新じゃが」市況

 

農水省畑作振興課いも類班 矢野哲男

5号では東京中央卸売市場における馬鈴しょの市況を報告しました。その後、太田市場の東京青果株式会、さらにはイトーヨーカドーの青果用馬鈴しょ担当者の方を取材する機会を得ましたので、私にとって興味深かった点をレポートします。

《東京青果株式会社》

・鹿児島では、新じゃがの収穫は沖永良部島→徳之島→種子島→本土という順番になる。本来は、それぞれの出荷のピークが重ならないように、調整するのが望ましいが、今年は暖冬のせいもあり、ピークが重なって競合が生じたと見られる。東京市場の他に、大阪市場、名古屋市場の動きを分析することも重要である。

・馬鈴しょ全体で見れば、青果用のシェアは小さく、むしろ外食や加工食品用が市況を下支えしている。しかし、この分野では海外からロットの安定した冷凍調製品の輸入が増加していることもあり、国産に対する需要が軟調になっているのが影響しているのではないか。

・馬鈴しょは玉ねぎと並んで量販店から見れば、常に利益の出せる商材である。ただし、馬鈴しょは家庭内で貯蔵が効くために、小売り価格が下がっても消費が増えないという特徴がある。(他の野菜よりも、価格弾力性が低い)

・市場サイドとしても男爵薯、メークインだけでなくいろんな品種が流通して欲しいと思う。そのためには量販店、そして、消費者の理解を得ることが必要ではないか。(大手の量販店の対応が変われば、大きく変わるであろう)

《イトーヨーカドー》

・じゃがいもは、青果の中では第5位の位置づけにある。消費者から見れば、ニンジンやタマネギと同じく常備野菜という性格で、購入する店も決まっており、価格が下がっても購買量が増えるというものではない。

・消費者に対するサービスの基本は、良い品質の商品を提供することにある。従って、まず味の良い「いも」を確保することが最優先の課題であり、男爵薯やメークインなどの既存品種で、優秀な産地を確保して周年供給している。

・これまで何度も新品種に取組んできたが、スポット的で長続きしなかった。キタアカリなども扱ってみたが、結局のところ男爵薯の方が売りやすい、というのが実態である。しかしながら、新品種については、良いものであれば今後とも取り組んでみたいと考えている。

 

 参考:本年3月〜5月の新じゃが市況(中央卸売り市場)

                  《対前年度比:%》

市場

産地

3月

4月

5月

数量

単価

数量

単価

数量

単価

東京

北海道

長 崎

鹿児島

沖 縄

84

90

179

173

95

79

77

68

64

81

84

134

305

93

118

53

49

48

53

56

90

98

114

261

104

43

69

57

43

63

中京

北海道

長 崎

鹿児島

沖 縄

113

147

156

1575

131

63

73

64

55

69

37

94

247

50

123

48

44

46

60

56

20

105

65

78

71

73

55

69

大阪

北海道

長 崎

鹿児島

沖 縄

89

101

162

247

100

81

68

70

65

77

48

132

150

201

91

51

44

49

48

55

87

89

140

92

122

71

39

66

 

 

■いも類関連機関紹介(3)

 

北海道農業試験場 畑作研究センターばれいしょ育種研究室

                                 森 元幸 室長

 平成9年4月1日付けで、入れ物も中身も新しくなりました。組織上は平成5年10月に発足した畑作研究センターが、新たに庁舎と圃場が整備され移転したからです。旧所在地の恵庭市島松では、昭和12年に農林省の指定による北海道農事試験場島松馬鈴薯・玉蜀黍試験地に始まり、組織名称の変遷はあっても「ばれいしょ育種事業」を一貫して続けてきました。これからも十勝の河西郡芽室町で、引き続き育種研究を続けます。3月31日付をもって梅村前室長が退職し、島松時代からの継続は小原研究員ただ一人となり、移転作業は大変でした。室長の森は長崎県のばれいしょ育種主任からの転任、高田研究員は種苗管理センター十勝農場からの出向、もう一人の研究員の小林は新規採用で8月着任という新規編成です。ただし森は3年間留守にした出戻りですが。

 当研究室はここ数年で新しく4品種を農林登録し、手持ちを出し尽くした感があります。平成4年に早生大粒の「とうや」、平成6年に赤皮高澱粉の「ベニアカリ」、平成7年に白肉大粒の「さやか」などの食用・業務用品種を、平成8年に早生澱粉原料用品種の「アーリースターチ」を発表しました。それぞれが新しい特性を発揮して、普及が期待されています。新品種というと長所ばかりを宣伝しがちですが、たとえば「とうや」は粉状そうか病に弱く湿地には向かないなど欠点もあります。新品種を取り上げていただくときは、特徴を知らないがために生じる失策を防ぎ、品種の能力を引き出すためにご相談ください。

 ばれいしょの研究は、日本のマイナー、世界のメジャーです。いわゆる先進諸国では、数百人規模の研究勢力を誇る大作物で、かゆいところに手が届く陣容を擁しています。残念ながら日本では、多種の分野を集めても数十人規模の研究勢力であり、とてもかゆいところに手は届きません。少ない研究勢力を有効に使うために、利用と普及は「日本いも類研究会」会員のご助力に期待します。当研究室はこれまでの十年間で品質や成分特性に優れる母本養成をシリーズとしてほぼ完了したので、これからは「高生産力・耐病虫性」の育種の基本に主力を戻します。みなさんの暖かくも厳しい眼差しで、再スタートした私たちの研究室を育てていただけるようお願いし、10年後には基本能力のステップアップした品種を発表する決意を述べて研究室の紹介を終わります。

 

■リレーエッセイ-すてきないも野郎たち(3)

 

「遺伝子組み換え作物の現状」

近畿大学 生物理工学研究所 助教授  渡邉和男

 遺伝子組み換え体作物には、省力化による経済性の向上、生産性の向上による食料供給の増進、農薬の使用量を減らすことによる環境への負担減少等の多様な利点があげられます。

 バイオテクノロジー利用による遺伝子組み換え体作物の安全性に関しては、これら作物の環境への影響、およびそれら由来の食品の安全性が考えられます。

 環境への影響は、商業栽培されている地域については十分な確認がなされてますが、使用する作物や地域によっては新たなかつ長期的な追跡調査が要求される場合もあります。

 組み換え体作物由来の食品の安全性に関しては、通常の食品と科学的に同等であると考えられています。これは、多大な試験調査に基づき得られた見解であり、OECDやFAO等の国際機関も認めております。

 一方、バイオ新技術について、なんだか怪しいというような漠然とした不安があります。統計調査によると、他の先進国と比べると日本では、このような不安を持つ一般消費者が多いようです。安全性に関する科学を論理的に啓蒙してゆくことによって、”わからない、知らない”ということに基づく不安を解消する必要があります。北米ではこのような啓蒙を民間団体が中心となって、漠然とした不安を理解に基づく関心に変えてきました。

 日本は農作物輸入国であり、これら食品に関する安全性の評価および一般啓蒙は遺伝子組み換え体作物生産輸出国と同様に進んで行かなければなりません。しかし、日本での安全性の評価、規制および許認可機構や研究開発は、慎重に論議をすすめ、また専門家が限られているため、全体の評価や情報の流通が遅れてきた傾向があります。組み換え体作物の大量輸入を目前とする今年になり、民間団体や消費者において、特定の関心がようやく起こってきております。

 食料輸出国である北米は、経済性の利点から遺伝子組み換え体作物の栽培を促進しています。ヨーロッパでは北米とは異なり、遺伝子組み換え体作物の栽培の進行は緩慢で、バイオ食品を一般のものと識別するように規制している傾向があります。これは、各国の食料政策が大きく絡んでいます。ヨーロッパは作物自給率が高く、EC圏内での作物やそれ由来の食品価格の保護を強化する一面があります。

 先に上げたように、組み換え体作物由来食品は既存の食品と同等に安全であるとみなされています。一方、信条、宗教等の理由や多様な消費者の需要にあわせて、食品に関する情報を知る権利やそれに基づいて、商品を選ぶ権利の確保も必要になって行きます。

 日本でも、今後組み換え体作物由来食品の表示をいかに実施できるかが、大きな課題です。例えば、大豆は日本での消費量の98%を輸入しており、その多くをアメリカ合州国に頼っています。除草剤耐性や耐虫性の組み換え体由来産物を含んだブレンド大豆の輸入量は今後増加してゆくと考えられますが、これらは醤油、味噌、豆腐等、日常生活にかかせない食材として使われます。また、家畜の飼料としても幅広く使われ、2次、3次加工食品にいたる表示は難しいと考えられております。また、これら表示は科学的にも経済的にも理にあわないと言う意見が多くみられます。

 先端研究開発が多様化してゆき、専門家でない一般消費者にはわかりにくいことがたくさんでてきています。日本の国家予算が頭打ちになっている状況で科学に関する部門はまだ配分が数%成長しており、バイオ技術のような先端研究開発は進行しております。一方、これらバイオテクノロジーによる先端的研究開発の促進のみならず、生命の源となる”食べる”ということへの先見的投資や一般市民への早期的な情報提供や啓蒙促進が必要です。

 市民のための科学技術および生産物として振興してゆくために、専門家と一般消費者との相互理解を日本で強化してゆくことにおいて、科学技術振興資金等よりの公的な支援、民間団体による仲介、地域と繋がった大学等による公開講座や相談等が重要になって行くと考えられます。

(和歌山放送 1997年7月19日 ラジオコラム、ラジオ放送原稿)

 

JRTニュースレター編集委員会より ご意見・投稿は、FAX 01527−5−2012 まで。

 

日本いも類研究会 ニュースレター第8号 1997.9.2 (計6枚) 次回の発行は9月末です。