JRT 日本いも類研究会(Japanese society of root and tuber crops)     ニュースレターNo.12 1998/1/23

【事務局からのお知らせ】

前号でご案内した馬鈴しょ新品種の試験栽培ですが、現時点で会員も含めて380人の方から申込みをいただいています。ただ、当初、1000人を想定していましたので、種いもにかなり在庫があります。もう少し規模を大きくして栽培してみたいという方がおられましたら、以下の条件で提供させていただいきたいと思いますので事務局までご連絡ください。(品種:キタアカリ・とうや・ベニアカリ)
      種いもの価格:各品種とも1袋(20キロ)2500円
      数    量:20キロもしくは10キロ単位
      送    料:着払い(口座振込みにより元払いも可能)
 
 
第11回トリニダッドトバゴ、ポートオブスペイン市に於ける国際熱帯いも類学会に参加して

(1997年10月19〜24日)
東京国際大学教授
川越いも友の会会長
ドゥエル・ベーリ

 
 いも類の専門家による3年毎の研究発表会が、国際熱帯いも類学会である。第11回国際熱帯いも類学会は1997年10月、トリニダッドトバゴのポートオブスペイン市で開催された。
 国際熱帯いも類学会という組織は30年前創立された学会で、目的は、熱帯いも類の栽培や利用などを推進することである。同学会で扱う熱帯いも類といえば、キャッサバー、ヤマイモ類、サツマイモ、ジャガイモ、タロイモ類などを含む。創立以来の学会の会場が熱帯や亜熱帯の国で行われ、トリニダッドトバゴ、米国ハワイ州、ナイジェリア、コロンビア、フィリピン、ペルー、カリブ海のグアデループ、タイ、ガーナ、ブラジルで行われた。同会の創立30周年を記念して、再び、トリニダッドトバゴが1997年の学会の会場になった。
 今回の国際熱帯いも類学会の参加者は140人位で、40ヵ国位から参加した。研究発表は全部、英語で行われた。
 海外からの参加者に連絡を取るために、トリニダッドトバゴの実行委員会はできる限り、電子メールを使っていた。各国の事情が様々なので、電子メールの利用が不可能なところへはファックスで連絡を取り、ファックスの利用も不可能なところへは電話や普通の郵便で連絡を取った。その関係で、郵便のみを使うより、準備が早く進んだ。
 学会では、発表やポスターの多くのテーマが育成や栽培や生理学や害虫や加工などについてであり、農業の専門的な発表が多かった。今回、トリニダッドトバゴが会場になっていたので、その国のいも類の利用方法が一つの学会サブテーマで、現地の研究家が熱心に発表した。学会では、研究発表のほかに、現地の試験場なども見学した。
 日本からの発表者も多く、12人が参加した。日本の参加者の多くが農林水産省の九州農業試験場(宮崎県都城市)や農業研究センター(茨城県つくば市)のさつまいも研究家であった。日本からの発表が7件、掲示発表(ポスター発表)が5件あった。日本のサツマイモ研究レベルが高いと他国の研究家にほめられた。実は、九州農業試験場の中谷誠氏などによるサツマイモ生理学関係のポスター発表がポスター賞を受賞した。
 次回の国際熱帯いも類学会は2000年で、会場が日本に決定されている。実行委員長は農業研究センターの小巻克己氏である。日本で消費しているいも類の種類が多く、ジャガイモ、タロイモ類、サツマイモ、ヤマイモ類、コンニャク、クワイ、などなので、発表する種が豊富である。
 
参考:中味がまだ不完全ですが、国際熱帯いも類学会の仮のホームページは、以下の通りです。
http://www.tiu.ac.jp/~bduell/ISTRC  コメントは是非 bduell@tiu.ac.jp へ。
 
 
「International Workshop on Sweetpotato Production System toward the 21st Century」 の 概要報告

 
九州農業試験場遺伝資源利用研究室
中谷 誠

 
 上記のワークショップが1997年12月9〜10日に科学技術庁と九州農業試験場の主催で宮崎県都城市で開催されました。現在、サツマイモの生産や利用は、世界中で大きな転換期にさしかかっているという基本認識の下、次世紀における人類の持続的発展に寄与しうるサツマイモ生産・加工・利用システムを構築するための研究・開発の方向と戦略を最新の研究成果に基づいて議論し、国際共同研究等への方向性を出そうというのがこのワークショップの主旨でした。9ヶ国、1国際機関から100名を越える方々に参加頂きました。通訳は用意しなかったのですが、大学や国公立の研究機関の方だけでなく、民間企業や地元の農業関係者の方々も参加頂いたのが特徴的だったと思います。
 開会の後、特別講演として、まず、山川理(九州農試)が、機能性の解明等を含めた加工利用技術と品種育成等の生産技術を直結させたサツマイモジュース開発等の成功事例を紹介し、民間企業も含めた幅広い分野のコラボレーションの重要性を指摘しました。続いて、Il-Gin Mok (International Potato Center)が、サツマイモに関わる国際研究機関として、今後の研究開発戦略を品種開発を中心に紹介し、遺伝資源の交換や系統の評価等の面で、各国の研究機関との協力関係を強めていくことが紹介され、国際的なコラボレーションの重要性が指摘されました。
 次に、本ワークショップの討論に向けて認識を共通にするために、米国(LaBonte,Lousiana State Univ.)、ニュージーランド(Steve Lewthwaite, New Zealand Institute for Crop & Food Research Limited)、インド(P. Kamalam, Central Tuber Crop Research Institute)、フィリピン(Gerry Mariscal, Philippine Root Crop Research and Training Center)、インドネシア(Muhammad Jusuf Yakub, Research Institute for Legume and Tuber Crops)、マレーシア(Kok Chee Mooi, Food and Industrial Crops Research Center)、ベトナム(Vu Dinh Hoa, Hanoi Agricultural University)、中国(Ma Daifu, Xuzhou Sweetpotato Research Center)、韓国(Young Sup Ahn, National Honam Agriculture Experiment Station)、日本(小巻克巳、農業研究センター)のサツマイモの問題点と課題が紹介されました。全体としては、各国とも従来比較的等閑視されていた加工利用関係の研究開発を強めていることなどが印象に残りました。
3番目のセッションとして育種関連技術について、中村研三(名古屋大学)が、遺伝子発現機構について、村田達郎(九州東海大学)が遺伝子導入について、LaBonteが、マーカー遺伝子を活用した選抜技術について、吉永優(九州農試)が、新たな形質であるアントシアニン色素を含む品種開発の実際について報告を行いました。
次のセッションでは、種苗の増殖から収穫に至る生産管理技術について、古在豊樹(千葉大学)が、組織培養技術やガス環境も含めた環境調節技術を活用したサツマイモ種苗増殖システムの将来像について、J. R. Schultheis (North Carolina State Univ., USA) が、米国で実際に行われている優良種苗生産からサツマイモ生産に至るトータルの生産システムについて、C. Bonsi(Tuskegee Univ., USA)が、宇宙ステーションでの生産を想定したNFT による水耕生産システムを紹介し、最後に、深澤秀夫(九州農試)が、サツマイモ生産の機械化の現状と種いも直播等を利用したより低コスト生産を可能とする機械化生産システムの将来像を報告しました。
 次いで、サツマイモのポストハーベスト関連技術開発について、S. J. Kays (Georgia Univ., USA) が、サツマイモの栄養学的得失を報告し、栄養価値向上のための研究方向を示し、吉元誠(九州農試)が、サツマイモの抗変異原効果や血圧上昇抑制効果等の各種の機能性について、菅沼俊彦(鹿児島大学)が、サツマイモでん粉の分子構造と加工特性との関連について、田丸保夫(鹿児島県農産物加工研究指導センター)は、スナック類や麺類等の加工製品開発の現状と将来方向を紹介し、最後に、小竹欣之輔(三栄源FFI(株))が、新品種を用いた天然食品着色料としてのアントシアニン色素の開発・企業化とその市場性について報告しました。
 最後のセッションは、サツマイモ生産の環境や社会との関わりをキーワードに行われました。米山忠克(農業研究センター)が、サツマイモは例外的に窒素肥料の要求量が少ない作物であり、その特性は、サツマイモ茎内の共生バクテリアによる窒素固定によっている可能性があることを、安田慶次(沖縄県農試)は、世界的に問題の大きいアリモドキゾウムシの総合防除技術について、C. Clark(Lousiana State Univ., USA)は、サツマイモの各種病害について、総合防除技術の開発状況を報告しました。最後にB. Duell(東京国際大学)が、サツマイモと地域・市民の文化の発展・展開について、埼玉県川越市の事例を紹介しました。私個人としては、米山氏のサツマイモの窒素固定の可能性の指摘が特に印象に残りました。
 ワークショップの最後に、国際共同研究に向けた提言を取りまとめるための論議を行い、(I)サツマイモ研究開発に関する国際的情報交換の円滑化(インターネットの活用)、(II)国際共同研究に向けたポストハーベスト関連研究課題、(III)国際共同研究に向けた生産管理技術関連研究課題、(IV)国際共同研究に向けた基盤的研究課題からなる提言を取りまとめました。閉会後に、いも焼酎工場、サツマイモ製粉工場を見学しました。
 このワークショップ全体を通じて個人的に印象に残ったことは、日本のサツマイモ研究への世界の期待は大きいものがあること、他の作物以上に国際的な交流を必要としていることなどを感じました。この他、主催する立場としては、国際会議のノーハウや施設等の豊富な大都会やつくばではなく、都城という地方都市での開催ということでの苦労もありましたが、サツマイモ産地である県・市や地元企業等のご協力も頂き、変な表現かも知れませんが、地域に根ざした国際会議に出来たような気がします。
 最後に、このワークショップ開催にあたり、多大なご協力を頂いた皆様に、この場をお借りして感謝を申し上げたいと思います。
 
 
 キタアカリの減農薬・良質・安定生産の試み (ニセコ町生産グループ1997年の報告)

 
日本いも類研究会会長
梅村芳樹
 

1996年暮、栽培技術指導の依頼があり、地域的には融雪が遅く、前進栽培は難しいが、減農薬であれば可能と考えて応えることにした。1月19日の栽培講習会から始め、播種前、萌芽直後、生育期間中に数回ばれいしょ畑を廻り、青空数室を実施した。その経過と結果を報告する。
 
1.冬季講習会
 「安全・良質,低コスト・多収の栽培技術」(北海道有機農業研究年報平成7年度)をテキストとして、初期生育の促進、窒素減肥による早熟化技術を取り上げた。目的は8月下句収穫による疫病回避である。
 同時に良質を肌で知ってもらうため、全員が自家生産したキタアカリを2キロずつ持参、電子レンジで調理し、食べ比べた。これは生産者間の差が大きく、きわめて効果大であった。
 
2.播種前講習会
 4月18日、浴光催芽中のハウスを回り、播種方法、施肥量と方法、萌芽前の中耕等について話した。今年は融雪が早く、5月中旬には播種できる、とのことであった。
 
3.生育中の青空数室
6月7日、もっとも早い畑は5−7葉期、田植え後に播種した所もあり、半数が末萌芽であった。当日朝、小雨が降ったが、畑の土はスコップで掘ったところ十分中耕に入れる状態であり、午後中耕するよう勧めた。(後日、この効果は高く評価された。)
7月5日、早い畑は開花、第一花房で生育停上していたが、6月の日照不足でやや徒長、茎長は55cmあった。大半は着蕾期、遅い所は未着蕾であった。また生育が旺盛で明らかに窒素過多と判る畑が多い。疫病は未発生、一般のばれいしょは薬剤散布を始めており、心配する参加者がいた。
7月16日、晴天が続き疫病発生のおそれはなかったが、生産グループでは一般農家の防除回数が3回にもなり、不安と言うので青空教室を実施した。生育の進んでいる畑は終花期、枕地では40gほどのいもが10個くらいあり、試食したところ、粉質で十分味が乗っていた。遅いものは開花はじめであり、茎長は60−80cmと遅れているほど長い傾向にあった。また日中は乾燥によるしおれが見られ、生育遅れ、過繁茂の株程ひどかった。枕地では播種機の方向によって生育が異なり、肥料落ちの少ない行きの2畝が茎葉の生育不良にもかかわらず、いもの肥大が良く、窒素過多がいもの肥大・成熟遅れになることが参加者に理解された。
 なお疫病の第一回防除は短期予報から見て、10日後にするよう自信(?)を持ってアドバイスした。結果として7月27目から降雨があり、防除効果大であった。
8月25日、早いところは黄変−枯凋期で収穫可能であったが、他は黄変期10目前−開花期。疫病防除は大半が7月25日、8月3、16日の3回。疫病の発生はごく少なかったので、生育遅れの畑だけ9月上旬に一回するよう話した。これは疫病による塊茎腐敗予防と良品質の確保のためである。
 
4.収量・品質
 詳しくは収量調査をしていないが、ヘクタール当たり25〜35トンであり、出荷量は全体で約5OOトン、この他に一次加工用に出荷したM下イモ(70グラム以下)が60トンあり、キロあたり33円(大コン出荷)になった。
 圃場毎に測定したでん粉価は格差が大きく、13.8〜17.5%、平均15.3%であり、茎葉過繁茂、生育遅れの圃場ほど低かった。M下イモのでん粉価は12.8〜16.1%、平均14.3%と一次加工原科として十分であった。
 出荷先の量販店、生協の評価は高く、消費者から直接追加注文、礼状が来ている。
 
5.考察
 融雪が早く、7月上・中旬の乾燥、8月の低温など減農薬ばれいしょの生産には好適な気象であったことが成功の原因の一つであろう。しかし6月の天候不順、窒素過多などのマイナス要因もあり、適切な土壌管理実施、疫病防除の見直しの効果も大きいと考えられる。とくに萌芽期前後の中耕は生育促進効果、除草効果が大きく、実施した生産者すベてが体得している。結果としてニセコでの減農薬ばれいしょ栽培の可能性が実証されたと言えよう。
 収量が予想より少なかったのは圃場の地力不均一による。萌芽、初期生育はじめ生育の揃いの不良な圃場が多く、とくに傾斜地、湿地で著しかった。萌芽不揃いは黒痣病によるものも多く、浴光催芽不十分、湿地での無理な早植えが原因と思われる。
 明年以降、施肥量の適正化、初期生育の促進技術、疫病初発生の予測技術などが向上すれば融雪期の遅延、天候不順にも対応でき、減農薬栽培が定着しよう。収量、品質についてもより向上する可能性は大きく、「安全・良質」を共に保証したキタアカリの生産体制の確立が期待される。しかし本年の結果から見ると8月上旬収穫の無農薬栽培は融雪の遅いニセコではきわめて難しいと思われる。
 

 
事務局より
 

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JRTニュースレター編集委員会より 
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日本いも類研究会 ニュースレター第12号 1998.1.23 (計 4枚)