紅丸 (べにまる)

登録番号 農林認定
種苗法 
北海道優良品種 ばれいしょ北海道第3号 1971. 6.17
(1938-)
地方番号 本育309号
系統番号 2901-6L.F.R.P.
組合せ Lembke Frühe Rosen×Pepo (1929 北海道農業試験場)

花 (北見農試) 草姿 (北見農試) 塊茎 (北見農試)
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用途 澱粉原料用
長所
  • 適応性が広く、極めて多収。
  • 澱粉の品質が優れている。
  • 塊茎腐敗が比較的少ない。
短所
  • 澱粉収量は「コナフブキ」より少ない。
  • 褐色心腐が多い。
  • ジャガイモシストセンチュウに感受性。

(1)来歴

 昭和4年(1929)に北海道農試本場(札幌市琴似)において、「レムブケ・フルーエ・ローゼン(Lembke Frühe Rosen)」を母とし、ペポー(Pepo)」を父として交配したものから選抜された品種である。昭和5年(1930)には皮色が赤いことから一度は棄てられかけたが、形が丸く、目が浅く、滑らかで土がつかず、ふく枝も短く掘りやすいため、一応、澱粉原料用として選抜系統に拾い上げられた。昭和8年(1933)より「本育309号」として試験を行ったが、現地における比較試験では留寿都村以外の町村や本場、支場、試作場の成績は芳しくなかった。留寿都村で良い成績を示したのは、試作を引き受けた篤農家大西麻太郎氏が自分の圃場で草丈の高い株を選別した結果、ウイルス病株が抜き取られていたのが一因として考えられる。留寿都村では口から口へと「309(サンマルキュウ)」の名が伝わり、昭和11年(1936)には在来品種を駆逐して村全体が「309」一色になったといわれる。しかし、昭和12年春の支場、試作場長会議で優良品種として提案されたが、食味が「男爵薯」、「蝦夷錦」に劣り、皮が赤く食用には向かず、でん粉含量も「金時薯」は、「神谷薯」に劣り、収量は「ペポー」に劣り、ウイスル病にも弱いことからあっさりと否決された。そして昭和13年(1938)に再提案し、澱粉用として羊蹄山麓地帯の限定品種にすることとして、反対意見続出の中ようやくしぶしぶと優良品種に決定し「紅丸」と命名された経緯がある。
 品種名の由来は、育成当時、後志地方で栽培されていた主要品種の「長白」、「蝦夷錦」は形が長く皮色が白いのに対し、本品種は丸々として大きく、皮色が紅であったことによる。しかし、その根底には札幌の自治検番にいた「雪丸」という芸妓の名にあやかったとの説もある。
 同年に満場一致で優良品種に認められた「明星」、「北海白」は、皮肉にも数年で姿を消し、極めて消極的に世に送り出された「紅丸」は、第二次世界大戦の肥料、農薬、労力のない最悪の条件に耐えられる品種として昭和16年(1941)には1万4千ha、昭和19年(1944)には3万6千ha、昭和24年(1949)には5万8千haと急激に増加し、澱粉原料用品種の大部分は「紅丸」に置き替わり、食用にまで栽培された。また、北海道ばかりでなく、府県の高冷地帯や水田の裏作にも適することが認められ、昭和24年(1949)には全国の栽培面積は9万4千haとなり、全国の42.4%を占めた。当時、「紅丸」の作付が統計にあらわれなかったのは、香川県ただ1県で、戦中・戦後の食糧不足の緩和に著しく貢献したことは有名である。その後、「農林1号」の作付の増加に伴い、「紅丸」の作付は減少したが、「農林1号」の作付が徐々に減少したことから、昭和47年(1972)から昭和63年(1988)まで再び北海道で最も作付面積の多い品種となった。昭和56年(1981)に育成された「コナフブキ」の普及により「紅丸」作付面積は次第に減少し、平成8年(1996)には作付面積が逆転されて以降も減少の一途をたどっている。平成25年(2013)の作付面積は208ha、平成26年(2014)には200haを割り、北海道の主要品種としての作付面積の公表対象から外れた。
 「紅爵(こうしゃく)」の名前で、「伯爵」とも呼ばれる白皮の「ワセシロ」との紅白セットで食用として売られることもあるが。

(2)形態的特性

 幼芽の色は微赤で、萌芽時の葉色は紫を帯びる。茎長は「コナフブキ」よりやや長く、茎数は多い。茎の色は緑で赤紫の2次色が斑紋状に分布し、特に基部は赤紫色を帯びる。茎翼はやや波状を呈する。そう性は中間型だが、生育初期には開いている。分枝は多く、よく繁茂する。倒伏は比較的少ないが、多肥などで茎長が伸びると増加する。小葉は広く大きく、色は緑である。葉軸に赤みを帯びた着色があるので、他の品種(特に「農林1号」)と区別しやすい。花色は白、開花数が多く、茎当り開花花梗数は「農林1号」より多い。花粉は微で、自然結果は少程度みられる。
 ふく枝の長さは中で、いも着きはやや密である。いもの形は卵形皮色は淡赤で肥大につれて淡くなる。表皮には一部ネットがかかり、完熟するにつれて多くなる。目はやや浅い。肉色は白で、維管束部に淡赤色の2次色がみられることが多い。

(3)生態的特性

 休眠期間は「男爵薯」より短く「農林1号」より長い中。萌芽が早く、初期生育及び早期肥大性はやや速い。枯凋期は「農林1号」並ないしやや遅く、中晩ないし晩生種に属する
 上いも数が多く、上いも平均一個重も大きく粒ぞろいは良い。現在栽培されている品種の中で、上いも収量は最も多収で、長年の努力にもかかわらず、この品種の収量性にまさる品種は育成されていないとされる。澱粉価は「コナフブキ」より約5ポイント低く、澱粉収量では「コナフブキ」よりやや少ない。環境適応性が大きく、管理が適正であれば多収をねらえる品種である。

(4)病害虫抵抗性

 ジャガイモシストセンチュウ抵抗性は無い。疫病抵抗性主働遺伝子を保有しておらず、圃場抵抗性も「農林1号」よりやや弱いため、疫病の初発生は早く、長期間の防除が必要である。塊茎腐敗には比較的強い。
 各種のウイルス病に普通に罹病する。PVY-Oによる病徴はれん葉型で、PVY-Tによる病徴は軽いれん葉を現す。PVAにも感受性で軽いれん葉を現す。PVX-oとPVX-bの両方に感受性である。PVSのモザイク系統には弱いモザイク症状を現す。葉巻病の第1次病徴による葉の着色は「男爵薯」や「農林1号」と同様に赤〜淡赤となる。北海道ではほとんど発生がみられなくなった青枯病にも「農林1号」より弱い。そうか病には弱く、粉状そうか病には「男爵薯」より強く「農林1号」並かやや強い。中心空洞は「農林1号」よりやや少ないが、褐色心腐は「農林1号」より多く、内部褐色斑点が頂部に偏在する型を示す。

(5)品質特性

 澱粉の白度は「コナフブキ」よりやや低い。澱粉粒子の大きさは「農林1号」及び「コナフブキ」より大きい澱粉の灰分及びリン含量は「コナフブキ」より少ない。「コナフブキ」に比べ糊化時の最高粘度が低く、ブレークダウンも小さい方である。最高粘度時の温度は「コナフブキ」よりやや高く「農林1号」より低い。ゲルの破壊強度及び破壊歪は「コナフブキ」よりやや大きく、「コナフブキ」よりやや強く伸びが良いゲルといえる。離水率も「コナフブキ」より低い。総じて、澱粉特性は澱粉原料用品種の中で最も優れており、ばれいしょ澱粉の固有用途全般に対応可能である
 肉質はやや粘質で、食味も特に優れているわけではないが、貯蔵中に還元糖が増加し甘味が増して食味が良くなるので、越冬後の「紅丸」を好む消費者もいる。水煮しても維管束部に赤い着色が残り、褐色心腐も多いので食用にされることは少ない。

(6)栽培上の注意

・施肥反応は「農林1号」より敏感で、多肥により枯凋期が遅れ増収する、澱粉価は施肥に応じて低下するため「コナフブキ」のような追肥による澱粉収量の増収は期待できない。
・生育途中で疫病により枯凋すると減収が大きいので、適期防除に努めること。特に多肥のときには防除の徹底が必要である。
・倒伏を少なくするには浴光催芽、早植えの実施なども必要である。
・採種栽培では、多肥による黄変期の遅延を避け、萌芽抑制のため貯蔵温度は低めに推移させること。

育成従事者

吉野至徳、宮永春水、山崎俊次




文献及び関連Web

北海道立農業試験場.“主要農作物優良品種の解説”.(1952)

山崎俊次.“馬鈴薯新優良品種「北海白」、「紅丸」及「明星」の特性”.北農.5(5),189-195(1938)

佐藤導謙、村田吉平.“北海道農事試験場本場育成・「本育」番号系統の来歴”.北農.74(3),289-315(2007)

宮澤春水.“北農文化叢書 じゃがいも今昔”.柏葉書院.(1946)
山崎俊次.“紅丸夜話” (1968)
安孫子顕彰会.“安孫子孝次先生にきく 農業よもやま話”.(1960)
後志生産農業協同組合連合会.“後志馬鈴薯小史”.(1961)

ばれいしょ品種の形態及びウイルスの病徴 (1) (独立行政法人種苗管理センター


ジャガイモ品種「紅丸」 (ジャガイモ博物館(浅間和夫氏による解説))
紅ですか,白ですか」 (ポテトエッセイ第26話 ジャガイモ博物館

辻学.ばれいしょの見本畑「ようていポテトサミット35」についてでん粉情報 2008年8月




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