アーリー ビューチー オブ ヘブロン
ヘブロン

原品種名:Early Beauty of Hebron
本第3034号



北海道農事試験場報告.1(1903.3) より


北海道農業試験場彙報第62号(1943)より

(1)来歴

 原品種名を「Early Beauty of Hebron」といい、1878年にアメリカで「Garnet Chili」の実生から育成された品種です(Potato Variety Inventory にはKing Edward × Eary Rose とある)。
R.N. Salaman "Potato Varieties"(1926)には「1878年にニューヨークのPeter Hendersonが配付したもので、"Garnet Chili" の実生と言われている」




わが国には明治28年(1895)に札幌農学校に輸入され、明治41年(1908)に「アーリー ビューチー オブ ヘブロン」として優良品種に決定しました。大正4年には「ヘブロン」と改名され、大正時代に広く普及しましたが、病害による退化が著しく栽培が減少しました。昭和4年(1929)には北海道における作付面積の2%、昭和10年(1935)には1%となり、昭和34年(1959)に優良品種から廃止されました。

(2)特性

 熟性は早生です。茎長はやや長く、そう性はやや直立型、茎部は淡赤紫色を帯びます。花は白色。いもはやや短い楕円形で皮色は黄白地に淡赤色の斑紋があり、表皮は滑らかです。いもは中粒で、目の深さは中位で数は多い。肉色は白く、肉質は緻密です。澱粉含量が多く粉質で食味は良好です。疫病には弱い。
 「アーリーローズ」に似ていることから、よく混同されたようですが、茎葉部に分布する赤紫色が淡く、表皮色が黄色地に極淡赤の大斑があることで容易に区別できます。
 北海道各地の栽培に適していました。

“馬鈴薯”.北海道農事試験場彙報.6(1908)によれば、“早熟種に属す、外皮の色は淡紅淡黄の大班相交る、其味は普通なり、其他は「アーリー、ローズ」と別に異ならず、薯塊一個の重量大なるものは六十五匁ありて平均は二十四匁内外なり”

山崎俊次.“馬鈴薯の品種と其の特性”には、“釧路地方に栽培されるヘブロンは地上部はアーリーローズに酷似してゐるが、薯の表皮色が黄白地に淡紅色の斑があるので見分けられる。”とあります。

主要農作物優良品種の解説”.北海道農事試験場彙報.46(1927)によれば、“ヘブロン(Early Beauty of Hebron)(本第三〇三四号) 原名を「アーリー・ブユーチ・オブ・ヘブロン」と称し、一八七八年米国にて「ガーネット・チリー」(Garnet Chili)の実生より育成したる両品種にして本道に広く分布す。早熟にして其特性「アーリー・ローズ」種に類似するも、茎は夫れよりも緑色なり。薯形稍短楕円形、外皮滑らかにし淡黄淡紅の大斑相交る。肉質緻密にして粉状を呈し澱粉に富み(澱粉含量一五.六七%)収量多く、食味良好なり。開花期は六月下旬にして茎葉枯凋期は八月下旬なり。

 




文献及び関連Web

北海道農事試験場.“馬鈴薯北海道農事試験場彙報.6(1908)
北海道農事試験場.“主要農作物優良品種の解説北海道農事試験場彙報.46(1927)

山崎俊次.“馬鈴薯の品種と其の特性”.北農.3(9),349-351(1936)

Beauty of Hebron (European Cultivated Potato Database)

Potato : Beauty of Hebron (Canada's Heritage Seed Program)

North American Potato Variety Inventory (Potato Association of America)

Jane Percy."Heritage Accessions".Potato Gene Resources Newsletter.13(2006) (Potato Research Center)




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