金時薯

(異名:十勝薯、釧路薯、頓別薯)



(1)来歴

 来歴は不明。東北地方からの移住に伴い北海道にもたらされた古い在来種と言われる。北海道では、品種試験の結果、大正15年(1926)に優良品種に決定し、旧樺太でも優良品種に認定されていた。
 埼玉県の「中津川イモ(大滝いも)」(赤)、群馬県上野村の「赤芋」、群馬県神流町の「赤いも」、山梨県の「おちあいいも」、長野県の「下栗芋」(赤)、静岡県の「赤じゃがた」、徳島県の「祖谷いも(ごうしゅいも、源平いも)」(赤)、愛媛県の「地芋」(赤)、宮崎県の「しょうのじゅ」などの在来種のDNAマーカ型が「金時薯」と一致することが明らかになっている。北海道内でも自家採種により現在も細々と栽培されている事例がある。
 寒冷な気候に耐え、病害に強く澱粉価が高いため、北海道では「神谷薯」や「疫不知」とともに澱粉原料用として天塩、宗谷地方や網走管内で多く栽培されていた。北海道における作付面積割合は、昭和4年(1929)には14%、昭和10年(1935)には14%、昭和11年(1936)には11%、昭和16年(1941)には7%、以降は「紅丸」の普及により急速に減少し、昭和19年(1944)には3%となり、昭和34年(1959)に奨励品種から廃止された。
 

(2)特性

 熟期は中晩生である。茎長は長く、そう性は直立型で、分枝が多く、茎は緑色で濃赤色が分布する。小葉は濃緑色で形は楕円形。花は赤紫色で、花弁の先端は白い。いもの形は短楕円形で、皮色は赤色で表皮は滑らか、目の深さ及び数は中位である。澱粉含有率は高く、多収。食味は秋は良くないが、越冬後良くなる。疫病には比較的弱いが、他の病害には比較的強く、PVXには免疫である。



文献

山崎俊次.“馬鈴薯の品種と其の特性”.北農.3(9),349-351(1936)
 釧路、網走地方に栽培されてゐる釧路薯は金時薯の系統である。

永田利男.馬鈴薯品種とその特性概要について.北農.26(7):1-29(1959)
p.3
真の古来よりの在来種というものは極く僅かしかなく,
(略)
北海道にあったものでは「金時薯」と「根室紫」の2種ということであるが, これらもその源を質せば東北地方からの移住に伴なってもたらされたものと推定される。

宮澤春水.じゃがいも今昔.柏葉書院 (1946)
p.36-37
 尚、十勝薯と金時薯(紫花)と同一のものであることも判明したのである。
 金時に白花と紫花とあることは事実で、私も宗谷の枝幸村で白花が大面積に栽培されてゐるのを見たことがある。(男爵薯にも白花と紫花とがあるやうである。しかし後者が正しい)但し金時薯の原名ありとすれば何んであるかは今以て判ってゐない。

野口健.甲信・東海地方の在来バレイショ品種(その1:品種特性と由来).いも類振興情報.96:24-27 (2008)
p.26
同グループの遺伝資源に「金時薯」は北海道で大正15年に優良品種になっているが、東北からの移住者より北海道にもたらされたとの
口碑がある
※原文には“石碑”となっているのは、“口碑”の誤り。

朝野尚樹.DNA多型を利用したばれいしょ品種識別SSR マーカーによる国内産ばれいしょの品種識別.種苗管理センター 平成18年度調査研究実績報告書 (2006)

朝野尚樹.DNA多型を利用したばれいしょの品種識別 SSRマーカーによる在来ばれいしょの品種識別.種苗管理センター 平成19年度調査研究実績報告書 (2007)

朝野尚樹.平成19年度種苗管理センター調査研究発表会.(2007)

井内美砂・小川純一.徳島県在来バレイショの系統分類と種苗生産.徳島農試研報.36:7-17 (2000)

内田重義、田口啓作.馬鈴薯”.北海道農事試験場彙報.62:1-129(1943)
p.21
 (11)金時薯 本種の来歴は不詳であるが、本場に於て品種試験の結果大正十五年に優良品種に決定したものである。寒冷な気候に耐え、澱粉含有率が高いので澱粉用として栽培するものが多い。食味は収穫時より貯蔵して越冬せしめた後に良好となる。又馬鈴薯疫病を除く他の病害には抵抗性が強い品種である。
 「十勝薯」、「釧路薯」、「頓別薯」等は本種の異名同種である。

北海道立農業試験場.主要農作物優良品種の解説.(1952)
p.156 (五)金時薯
 本品種の来歴は不明であるが、古くから本道に於いて栽培され品種試験の結果、大正十五年優良品種に決定した。
 中生の晩で、草丈高く、姿勢直立、分枝が多く、茎は緑色に濃赤色が分布する。葉形は楕円形で濃緑、花は赤紫色で先白である。塊茎は短楕円形、濃紅色で表皮滑らかである。目の深さ及び数は共に中位、澱粉含有率が高く、食味はよくない。
 本種は、特に澱粉原料用馬鈴薯栽培地帯に適する。

樺太庁中央試験所.主要農作物優良品種の解説 16.馬鈴薯.樺太庁中央試験所彙報.第1類(農業、畜産)第1号:22-24 (1932)

樺太庁中央試験所..馬鈴薯.樺太庁中央試験所彙報.第14号 第1類(農業)第4号 (1935)

進藤省三,渡邊保治..主要農作物優良品種の解説 15.馬鈴薯.樺太庁中央試験所彙報.第32号 第1類(農業)第12号:25-29 (1939)


関連Web

ジャガイモ品種「金時薯」(きんときいも) (ジャガイモ博物館



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