トヨアカリ

登録番号 農林認定 ばれいしょ農林27号 1986. 6
種苗法  第1505号 1988. 1.18登録
2003. 1.19満了
北海道優良品種 ばれいしょ北海道第18号 1981. 4.16
(廃止)
地方番号 北海67号
系統名 島系534号  
系統番号 74067-71  
組合せ Tunika×WB61037-4 (1974 北海道農業試験場交配) 系譜図

花 (北見農試) 草姿 (北見農試) 塊茎 (根釧農試)
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用途 澱粉原料用
長所
  • ジャガイモシストセンチュウに抵抗性。
  • 粉状そうか病に強い。
  • 疫病圃場抵抗性も比較的強い。
短所
  • いもの肥大が遅く、早期収穫には適さない。
  • 茎葉の黄化や巻き上がりにより、ウイルス病と紛らわしく、早期に枯凋することもある。
  • 澱粉品質は「紅丸」より劣る。




(1)来歴

 昭和49年(1974)に北海道農試において、昭和47年(1972)に国内で初めて発生が確認されたジャガイモシストセンチュウに抵抗性の澱粉原料用品種の育成を目標に、ドイツ民主共和国から導入したジャガイモシストセンチュウ抵抗性のツニカ(Tunika)」を母、早生、高澱粉価の「WB61037-4」を父として交配して、翌年より選抜を開始し、昭和57年(1982)には「島系534号」、昭和58年には「北海67号」として澱粉原料用品種としての実用性を検討した結果、昭和61年(1986)に「ばれいしょ農林27号」として登録され、「トヨアカリ」と命名されました。品種名は澱粉が豊産であることに加え、線虫抵抗性品種の栽培からくる農家の曙光を表わし、目の赤いことにもかけている。国内育成品種としては初めてのジャガイモシストセンチュウ抵抗性品種です
 平成7年(1995)年には310ha作付されましたが、平成13年に優良品種から廃止されました。
系譜図

(2)形態的特性

 萌芽時の葉色は赤紫を帯びています。そう性はやや直で、茎長は「紅丸」並のやや長です。茎数及び茎の太さは中で、分枝数は中です。茎色は緑で「農林1号」同様赤紫色の2次色が斑点状に分布しています。茎翼はやや波状です。葉色は「農林1号」より淡い淡緑で、頂小葉及び小葉の形は中間で、大きさは中です。葉軸の色は赤色を帯びています。生育後半に葉が淡緑化して巻き上がるなど、ウイルス病の症状と紛らわしい欠点があります花色は「コナフブキ」よりかなり濃い赤紫系で、花弁の先端部分は外面がやや淡い。花は大きく数は多い。花粉は多く、自然結果も多い。葯の色は橙色で「コナフブキ」などより濃い。
 ふく枝の長さは中で、いも着はやや疎です。いもの形は扁球形、皮色は黄褐で、目には淡赤紫の着色があり、表皮は粗い。目の深浅は中です。肉色は淡黄です。

(3)生態的特性

 塊茎の休眠はやや短く、「農林1号」に近い。萌芽及び初期生育は「紅丸」に比べてやや遅いですが、開花期は早い。いもの早期肥大性はやや遅く、早掘りの澱粉収量は、「紅丸」や「コナフブキ」に比べ少ない枯凋期は「紅丸」並の中晩生に属します
 上いも平均一個重は「農林1号」より小さいですが「紅丸」より大きい。上いも収量は「コナフブキ」よりやや多いですが、澱粉価はわずかに低い。澱粉収量は「農林1号」より多く、「紅丸」及び「コナフブキ」並です。

(4)病害虫抵抗性

 ジャガイモシストセンチュウ抵抗性遺伝子H1を持ち、パソタイプRo1に対して抵抗性です。疫病抵抗性遺伝子R1を持ち、圃場抵抗性もやや強いので、初発生及び病勢の進展は比較的遅い。疫病による塊茎腐敗抵抗性は中程度。Xモザイク病でモザイク症状がみられます。Yモザイク病は、PVY-Oに対してはえそ型の病徴を現しますが、第2次病徴はれん葉、脈えそ、縮葉、モザイク症状や不明瞭なえそ斑が現れます。PVY-Tに対しては感染しても病徴を現しません粉状そうか病には強いですが、そうか病には一般品種並に弱い。塊茎の軟腐病抵抗性はやや弱、青枯病にも弱い。中心空洞の発生は微程度みられ、褐色心腐の発生は「紅丸」より少ない。

(5)品質特性

 澱粉の白度は「紅丸」並です。澱粉粒子の大きさは「紅丸」より小さく「農林1号」より大きい澱粉中の灰分及びリン含量は「紅丸」及び「農林1号」より多い糊化時の最高粘度は高く、最高粘度時の温度は低いが、ブレークダウンが大きい。総じて、澱粉特性は「紅丸」のよりやや劣り、「コナフブキ」に似ています

(6)適地及び栽培上の注意

 北海道の澱粉原料用ばれいしょ栽培地帯の全域に適し、特にジャガイモシストセンチュウ発生地帯に普及を優先する。
 栽培上の注意は「ツニカ」に準ずるが、塊茎形成が遅く初期肥大が劣るので、浴光催芽、早植えにより生育の促進を図る。
・ジャガイモシストセンチュウ抵抗性であるが、種いもの生産は線虫のいない圃場で行う必要がある。線虫密度の高い圃場では減収するため、輪作、殺線虫剤施用などの手段を講じる必要がある。
・塊茎形成が遅く、初期の肥大が劣るので、生育の促進に努めておき、早掘りを避けるようにする。
・生育後期に頂部葉がスプーン状となり、一部黄色味を帯びてくるので、採種圃の抜取りは早めに行うようにする。また斜里地方では、土壌の乾燥などにより、葉の周辺から枯れ、葉柄がしおれることがあり、収量が上がりにくいので注意が必要。

育成従事者

西部幸男、坂口進、入倉幸雄、奥山善直、梅村芳樹、気賀沢和男、稲垣春郎、森元幸、佐藤正人、内沢啓



文献及び関連Web

後木利三.“農作物優良品種の解説 (1978-1986)”.北海道立農業試験場資料 第18号(1987).北海道立中央農業試験場


森元幸.ばれいしょ澱粉原料用の新品種「トヨアカリ」”. 農業技術.41(12):.554-555 (1986)

馬鈴しょ「トヨアカリ」(北海67号)  (北の農業情報広場
ばれいしょ優良品種候補「北海67号」(トヨアカリ)について (昭和61年農業新技術発表会 要旨)
西部幸男、入倉幸雄.寒地作物遺伝資源情報 第1号 ばれいしょ 北海67号”.北海道農試研究資料.25,79-83 (1984)

ばれいしょ品種の形態及びウイルスの病徴 (1) (独立行政法人種苗管理センター


ジャガイモ品種「トヨアカリ」ジャガイモ博物館(浅間和夫氏による解説))


「トヨアカリ」の父親に関して
森元幸、西部幸男.寒地作物遺伝資源情報 第4号 ばれいしょ WB61037-4”.北海道農試研究資料.33,97-99 (1987)




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