中津川芋



(画像提供:羽田の玉ちゃん じゃがいもの研究

(1)来歴

 埼玉県の秩父特産の「中津川いも田楽」に使われている品種です。近隣には「紫いも」と呼ばれる別の品種もあります(これも「中津川芋」と呼ばれている)。来歴は定かではありませんが、奥秩父連山を県境にした山梨県から雁坂峠(2,083m)を越えて武田信玄の落人がもってきたとの説、大滝村出身の兵士が日露戦争で捕虜になり、背のうの下にかくしてもち帰り、中津川で栽培したのが始まりであるとの説などがあります。農家の自家更新により種いもが作り続けられており、現在でも中津川渓谷を中心に栽培されています。

 神戸大学の保坂和良博士は、大滝村より「中津川いも」と「紫いも」を取り寄せ、葉緑体DNAと核DNAを分析したところ、「中津川いも」については普通バレイショと同じ葉緑体DNA(T型)を持つことから、明治以降に導入されたものであろうと推定しています。一方、「紫いも」は、近縁亜種のS.tuberosum ssp.andigenaと同じA型葉緑体DNAを持ち、核DNAも普通バレイショと異なりandigenaに類似していることを明らかにし、1600年頃ヨーロッパからジャカトラを経て長崎に入ったバレイショの末えいであろうと推論しています。

(2)特性

 地上部は茎が細く(ウイルスためか品種の特性かは不明?)、花は薄い紫です。いもの皮色は淡いピンクで目が赤く、皮は薄く形は細長い。いもが小さく、収量は少なく「男爵薯」のせいぜい半分程度です。そうか病には弱いようです。保存性は「男爵薯」よりも良いといわれています(フヤフヤになりにくい)。
 いもはねばりがあり、身はしまっていますが味がありません。煮ても蒸してもくずれず、串にさしても割れないため、地元産のみそ、えごま、調味料等を使用して、いも田楽として特産化が図られ、年ごとに人気が高まりつつあります。収穫したイモのほとんどは地元で消費されており、三峰神社の境内で「田楽いも」として使われるほか、農協の直売所でも売られています。煮くずれしないのでカレーに入れる人もいるようです。三峰神社の参拝客という安定した仕向け先があったがゆえに、これまでの長い年月を生き延びることができたものといえそうです。

 栽培適地は、標高400〜500メートル以上の準高冷地が望ましいといわれ、昔から山あいの集落で、無肥料、無農薬の自然農法によって栽培が続けられてきています。標高の低い地域で栽培すると大きないもになってしまうようです。植付は4月初めで7月ころに収穫されます。




文献

Hosaka,Kazuyoshi "Similar introduction and incorporation of potato chloroplast DNA in Japan and Europe ". Jpn J Genet 68:55-61(1993)

Hosaka,K.,Mori,M.,Ogawa,K. "Genetic relationships of Japanese potato cultivars assesed by RAPD analysis". Am Potato J 71:535-546(1994)

関連Web

中津川いもの解説 (ジャガイモ博物館(浅間和夫氏)

中津川いも (埼玉県農林部地産地消推進室※ここに掲載されている写真は「紫いも」です。
秩父の地場野菜 中津川芋 中津川いも田楽 (秩父農林振興センター

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