クイックスイート(農林57号)


(1)来歴
 クイックスイート(関東116号)は、「ベニアズマ」を母本、「九州30号」を父本とする交配組合せにより、独立行政法人農業技術研究機構作物研究所で育成されたもので、平成14年に命名登録された。

(2)形態的特性
 しょ梗の長さは「短」、強さは「やや強」、いもの形状は「紡錘形」、大きさは「大」で、いもの形状、大小の揃いとも「やや整」である。外観は「やや上」、いもの皮色は「赤紫」、肉色は「黄白」で、カロチン、アントシアニンは含まない。

(3)生態的特性
 萌芽の遅速は「やや早」、萌芽揃いの整否は「中」、萌芽の多少は「中」、萌芽性は「やや良」である。育成地における上いも収量は「ベニアズマ」の95〜124%程度で、ほぼ同等である。

(4)病害虫抵抗性
 病虫害抵抗性は、つる割病対して強く、ネコブセンチュウにやや強い。立枯病及び黒斑病に対しては「中」の抵抗性である。貯蔵性は、「中」であり、「ベニアズマ」より貯蔵しやすいが「高系14号」には劣る。

(5)品質特性及び加工適性
 蒸しいもの肉色は「淡黄色」であるが、肉質は「中」、繊維も「中」である。食味は「やや上」で「高系14号」に優り、「ベニアズマ」並からやや劣る。澱粉粒は亀裂の入った特異な形態を示し、「ベニアズマ」等一般的な品種に含まれる澱粉の糊化温度より20℃程度糊化温度が低い。「ベニアズマ」に比べ半分程度の時間で、蒸しいもの糖度が最高値に達する。このため、電子レンジ調理でも食味が落ちない。また、早堀りでも食味がよい。

(6)栽培上の注意
 立枯病抵抗性及び黒斑病抵抗性が中であるので、病害多発地帯では防除に努める。
 裂開を生じる場合があるので、極端な早植え栽培等裂開が生じやすい栽培条件は避ける。