当館には関東の農業関係の団体がよく来てくれる。わたしがまず展示品の説明をやり、質問を受ける。そのあとこっちから向うの甘藷事情を尋ねる。みんな甘藷農家だから、たちまち話がはずみ仲良くなる。
今日は千葉県香取郡山田町の生活改善グループの婦人、40名が来館、楽しい研修会を開いた。引率は同町役場の篠塚敬治環境課長。同氏は研修会後の雑談の時、こんな感想をもらしてくれた。
「いやあ、来て良かったです。サツマイモなんてどこにでもあるものでしょう。特にうちの方はイモ畑一色の『いもどころ』だから、川越へ行ったって大したことはないと思ってたんです。ところが来て見て驚いちゃった。サツマイモがこんなに様々な面を持っていたなんて、ちっとも知らなかったですからね。でもねえ、こういうことができるのも、川越だからだと思うんです。うちの方で同じことをやったってだれも来てくれませんよ」
たしかに川越は伝統と地の利に恵まれている。江戸時代以来、日本一うまいイモの産地で通ってきたし、緑に飢えている巨大な首都、東京に近接している。でも山田町だっていいイモの産地だし、それで町おこしをしようとしている所だ、「なにかやっているんでしょう?」と聞くと、やっぱりあった。以下がそれで、すばらしいことをやっているではないか。
「町名が同じということで、うちは岩手県の三陸海岸の町、山田町と姉妹都市になっています。それで向うの秋祭りに、こっちのサツマイモを持って行って直売しています。
うちは下総台地上のサツマの大産地ですからね。岩手の山田町にもサツマはあるけど味がだめ。だからうちのイモは引っぱりだこです。味だけでなく、色も形もいいとね。
えっ、品種? べニアズマです。うちの町には前々から農協の農業祭がありました。それを全町民のものにしようと、昨年から『ふれあい祭り』に改めました。11月3日で、その日には岩手の山田町の人が来てくれて、海のものを直売してくれます。三陸の海で取れたサケ、ホタテ、ワカメなどいろいろです」