フィリピンの女性で日本人と結婚、在日6年という清水レニーさんが日本人の女友達4人に連れられてきた。レニーさんは日本語が上手なので、向うのサツマイモのことを聞くと、心よくこんな話をしてくれた。
「わたしはルソン島南部の出身。マニラの南ね。フィリピンではサツマイモは『カモテ』。カモテは好きかって? 向うのは水っぽい。それにあまくないからだめ。日本へ来てびっくりしたのは、どのカモテもホクホクであまくておいしいこと。でもあれを食べるとガスが出るから、やっぱり食べたくない。
フィリピンにいた時よく食べたのは、イモではなくツルの方だった。ツルの先のやわらかい所を摘んで、油でいためたり、ホーレン草のようにゆでて食べる。イモはガスが出るから嫌いだけど、ツルは好き。ところが日本ではツルを売っていない。スーパーにも八百屋にもない。今は千葉県の船橋に住んでいるが、近所にカモテ畑がある。そこで畑に人がいると『ツルを少し下さい』とお願いする。するとだれもが『どうするの?』と不思議がる。そこで今のような話をいちいちする。そうしないとツルをもらえないから・・・」

日本もフィリピンも、サツマイモと言えばオナラなのがおかしかった。そのせいだけでもあるまいが、フィリピンではイモよりツルの方が好まれているようだ。それにしても面白かったのは、レニーさんの悪友たちが渋る彼女を川越のカモテ・レストラン、「いも膳」へむりやり連れて来てしまったことだ。
そこで彼女に「いも懐石」の感想を聞くと、ニコニコ顔でこう言った。
「おいしかった、本当に。あれは芸術品、ガスも問題なし」