30年近くも親しく付き合っている県立民俗文化セン夕ーの朱通祥男工芸室長が、新米館長のわたしの仕事ぶりを見に来てくれ、こんな助言をしてくれた.
「先生の仕事ぶりを見て、すばらしいなあ、ああできればなあと思うことがあります。それは客が来るとさりげなく寄って行って、手近な展示品の説明を始めちゃうこと。日本の博物館で館員が自分の方から入館者に話しかけるということは、まずありません。
だからだれも専門的な知識を持っている人から、なにかを教えてもらえるなんて思っていない。それが先生は違う。だれにでもかわず話しかけ、相手をイモ話に引き込んじゃう。ここへ来る人はイモ好きな人たちばかりだから嬉しくなっちゃって、たちまちワイワイガヤガヤしゃべりだす。
こんなににぎやかな博物館は見たことがない。博物館はこれでなければならないのだが、実際にはできない。それを先生は当然のこととしてやっている。入館者のあの目の輝きや嬉しそうな顔を見れば、もう言うことなしです」
「ただ展示方法はまだまだ。言っちゃあ悪いが、高校生の文化祭のレべル。素人くさく、平板的。ではどうすればいいか? 立体的なものをふやし、立体的な展示をエ夫するんです。その気で他の資料館なり博物館なりを見に行って下さい。わたしの言っている意味が分かるはずです」
「次は展示品の精撰。それにしても狭い所にまあゴチャゴチャ並べましたね。思い切り、整理しましょう。たとえばここで1番人気があるという生イモのコーナーもだめ。30種類もあるというけど、わたしにはどれも同じものに見えちゃう。素人にも分かるのは皮の色による区別。赤イモか白イモかの二つ。
次は中身の色による区別。白か黄かオレンジか紫かの4種。あとは時代による区別。昔なつかしいもの、今、八百屋にあるもの、これから伸びそうな未来のイモ。これぐらいの区別で整理すればすっきりするし、展示をする側の主張も理解してもらえるんじゃあないですか」
「それとサツマイモは見るものじゃあない、食べるものでしょう? 食べ物は、うまいか、まずいかだけが問題。だからこれぞというものをふかしたり、焼いたりしておいて試食してもらい、感想を聞く。毎日でなくていいんです。週に1~2回、それも時間をきめて、一切れずつでいいんです。絶対受けますよ」
朱通さんはかつて埼玉会館郷土資料室の室長だった。その時、特別展『ザ・さつまいも』(1986.10.1~26)を企画開催し、同室始って以来の大当りを取ったイモ通だ。それだけにその助言は適切なものばかりで、本当に嬉しかった。