美深紅



系統番号:3422-12





(1)来歴

 昭和9年(1934)に北海道農事試験場本場において「神谷薯」を母、「Pepo」を父として交配を行って育成されたもので、昭和12年(1937)より美深試作場において本場から種いも2個を譲り受けて増殖、昭和13年(1938)から試験を続行し、昭和16年に道内各地で地方適否を調査した結果、昭和17年(1942)に優良品種として採用された品種です。昭和34年(1959)に優良品種から廃止されました。


(2)特性

 極晩生で耐病性にとみ、澱粉価が高いため澱粉原料用に適していますが、収量においては目立つほどのこともないのであまり栽培されませんでした。
 ふく枝が長く、二次生長しやすい。いもは数は多いですが、くずが多い。食味は悪い。


“馬鈴薯新優良品種「美深白」及「美深紅」の特性”.北海道農業試験場時報.169,1-7.から抜粋
 一、一般特性 茎葉枯凋期は「神谷薯一号」より数日晩いから極晩熟種に属する品種である。草丈は「神谷薯一号」と略同じで高いが、茎は太く、茎及葉は稍濃緑色で、花は淡赤紫色である。
 二、薯塊 長楕円形で先端が稍尖り、「神谷薯一号」と同様に小形のものが多く、表皮は淡紅色を呈して滑で目は少なく且極く浅い。肉は白色で、食味は余り良好でない。
 三、耐病性 疫病に対しては「神谷薯一号」と同様に最も強く、萎縮病には殆ど罹らず、湿腐病にも強い。
 四、収量及澱粉含有率 薯塊の収量は年により又地方によつて必ずしも一様ではないが、「神谷薯一号」に比べれば遙かに多い。「紅丸」に比べても檜山、倶知安両試作場では多く、美深、美瑛両試作場では相匹敵してゐる。極多収の品種で澱粉含有率は島松馬鈴薯試験地では「紅丸」と略同様であるが、その他の試験機関に於ては概ね「神谷薯一号」及「紅丸」より高く、随つて澱粉収得量は「神谷薯一号」より四割以上も多い。

 (略)…「美深紅」は澱粉用として「神谷薯一号」に代り、…(略)…釧路、根室及北見地方を除く各地で栽培するのに適してゐるが、栽培に当つては左の事項に特に注意を要する。
 「美深紅」栽培法は大体「神谷薯一号」に準じて宜しいが、肥料を増減しても薯塊収量の増減は割合に顕著でなく、窒素質肥料を過用すると茎が徒長倒伏して却つて減収を招くことがあるから、肥料の配合に注意を要する。
 (略)…目が少ないから種薯は二つ以上に細断せぬやうにし、又疫病に対して強いからと言つても薬剤撒布を怠つてはならぬ。




文献及び関連Web

北海道農業試験場.“馬鈴薯新優良品種「美深白」及「美深紅」の特性”.北海道農業試験場時報.169,1-7.
佐藤亮、藤原秀雄.“馬鈴薯新優良品種「美深白」及び「美深紅」の特性”.北農.10(3): (1943)





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