マチルダ (Matilda)

登録番号 農林認定
種苗法 
北海道優良品種 ばれいしょ北海道第24号 1993. 3.26
原品種名 Matilda  スウェーデン育成  
地方番号 (F891) (輸入品種等選定試験の試験番号) (1989)
系統番号 (H8601) (ホクレン農総研の導入番号)
組合せ 68/2144×SV67108 (スウェーデンSvalöf社) 系譜図

花 (北見農試) 草姿 (北見農試) 塊茎 (北見農試)
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用途 食用 (特に冷凍ホールポテトなどの業務用)
長所
  • 目が浅く、形がととのっており、油加工以外の加工適性に優れる。
  • いもが小さく、従来の食用品種の規格外にあたるサイズでも品質が良い。
短所
  • ジャガイモシストセンチュウに感受性。
  • 熟期が「農林1号」並かやや遅い。
  • 二次生長の発生がやや多い。


(1)来歴

 スウェーデンのSvalöf社が、「68/2144」を母、「SV67108」父として交配し、選抜を加えて育成した「Matilda」という品種である。品種名は豊作の女神「Matilda」を意味する。(系譜図
 日本へは昭和60年(1960)にホクレン農業協同組合連合会が検疫輸入し、長沼研究農場において「H8601」の試験番号で昭和63年(1988)に予備調査を実施し、平成元年(1989)より「F891」の試験番号で北海道の輸入品種等選定試験に供試した。その結果、平成5年(1993)に北海道の優良品種に決定した
 小粒でホールポテトなどの一次加工用に適した品種である
 北海道の十勝地方、特に芽室町を中心に作付けされており、作付面積は平成10年(1998)に初めて100haを超え、以降100ha前後で安定的に推移してきた。近年は増加傾向にあり、平成24年(2012)の作付面積は137ha、以降は200haを超えたとみられる。

(2)形態的特性

 茎長は「農林1号」よりやや長い。茎は緑色で一部に紫色を帯びる。分枝数は中で、そう性は中間型である。葉色は淡緑で、小葉の大きさは中である。花は白色でやや大きい。花数は中で、自然結果は少~中程度みられる。
 ふく枝の長さは「農林1号」より長めの中。いもは卵形で、皮色は黄色で表皮はやや粗い。目は浅く、外観は良い肉は黄白色である

(3)生態的特性

 休眠期間はやや長い。萌芽期及び開花期は「男爵薯」よりやや遅い。枯凋期は「農林1号」並かやや遅い中晩生である。
 上いも数は「男爵薯」よりかなり多い個数型品種である。上いも平均一個重は「男爵薯」よりやや小さい。上いも収量は「男爵薯」より多く「農林1号」並かやや少ない。中以上いも収量は「男爵薯」並で「農林1号」より少ない。澱粉価は「男爵薯」並ないしやや高く15~16%程度である。「男爵薯」に比べ、多肥による中以上いも収量の増収効果がやや高く、澱粉価の低下割合は小さい。疎植による株当り上いも数の増加程度は「男爵薯」より高く、中以上いも収量の増加割合がやや高い。

(4)病害虫抵抗性

 疫病圃場抵抗性が非常に強く、無防除栽培も可能といわれていたが、平成10年(1998)頃から「マチルダ」を侵すことができる新しい疫病菌の系統が発生し、一時無防除栽培が難しくなった。しかし、疫病菌の系統の変化により、現在は再び強い抵抗性を示している。塊茎腐敗抵抗性も強いとされていたが、「マチルダ」を侵すことのできる疫病菌系統に対しては腐敗も多くみられる。Yモザイク病に抵抗性があり、Yウイルスの移行は少ない。PVY-Oの汁液接種ではえそ反応が強く現れる。そうか病には既存品種と同様に罹病する。ジャガイモシストセンチュウに感受性である
 褐色心腐及び中心空洞はほとんどみられないが、夏期に乾燥し8月中下旬に降雨があると二次生長しやすい

(5)品質特性

 目が浅く、剥皮歩留り及び作業性は「男爵薯」より優れる。剥皮褐変は「男爵薯」より少ない。肉質は年次変動があり、低温年はやや粉質、高温年はやや粘質となる傾向がある。煮くずれは少なく舌ざわりはやや滑らかだが、澱粉価が高くなると煮くずれが増加し舌ざわりもやや粗となることがある。調理後黒変は「男爵薯」より少なく、ほとんどみられないが、施肥のアンバランスによりテクスチュアを下げたり調理後黒変を増やすことがある。食味は年次間差や個人差があるが総じて良好である。
 小粒品種なので、小粒は冷凍ホールポテト、中粒は冷凍ベークドポテト向けなどに適する。従来、品質の劣る小粒くずいもを使うことの多かったホールポテト、サラダなどの分野に完熟小粒の供給をねらった特徴のある品種といえる。
 還元糖含量が多く、油加工には向かない。
 用途は、食用及び油加工以外の加工食品用である。

(6)適地及び栽培上の注意

 北海道一円に適する。
これまで、疫病抵抗性がかなり強いので、防除回数を軽減できるとされていましたが、「マチルダ」を侵すことができる新しい疫病菌が発生したので、適宜防除を行う。
・小粒完熟塊茎の生産を主な目的とするので、窒素の多用及び疎植を避ける。また、小粒を増やすためには、できれば大きめの全粒種いもを使うのが望ましい。 
ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持たないので、発生圃場での栽培を避ける
・そうか病には既存品種並に罹病するので、同病の発生圃場には作付しない。




関連Web

三浦豊雄 編.“農作物優良品種の解説 (1987-1995)”.北海道立農業試験場資料 第26号(1996).北海道立中央農業試験場

ばれいしょ導入品種「F891」(マチルダ)  (主要成果情報)
ばれいしょ「F891」(マチルダ)  (成績概要書)

ばれいしょ品種の形態及びウイルスの病徴 (1) (独立行政法人種苗管理センター


ジャガイモ品種「マチルダ」 (ジャガイモ博物館(浅間和夫氏による解説))

Matilda (Canadian Food Inspection Agency)
Matilda (European Cultivated Potato Database)


馬鈴薯「マチルダ」の冷凍技術。新種ポテトで地域振興をめざします!(PDF) (道総研食品加工研究センター 成果)

ジャガイモ疫病菌の系統分化による圃場抵抗性品種の罹病化とその対策 (成績概要書)





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