キタムラサキ

登録番号 農林認定 ばれいしょ農林50号 2004.1.26
種苗法  第14041号 2006. 3.20登録
北海道優良品種 ばれいしょ北海道第42号 2004. 3.16
地方番号 北海88号 (2000)
系統名 島系578号   (1995)
系統番号 91091-103
組合せ 島系571号×島系568号 (1991 北海道農業試験場) 系譜図

 (北農研センター) 草姿 塊茎 (北見農試)
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(1)来歴

 「キタムラサキ」は旧農林水産省北海道農業試験場(現(独)北海道農業研究センター)において、肉色が紫でジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持ち、栽培適性に優れた生食用品種育成を目標とし、紫皮紫肉の「島系571号」を母、白皮白肉の「島系561号」を父とするジャガイモシストセンチュウ抵抗性系統間の交配集団より選抜された系統です。なお、紫肉の由来は、紫皮在来品種「根室紫」の自然結果より選抜された「島系284号」で、肉色が極淡い紫の系統です。
系譜図
 平成3年(1991)に交配採種、翌4年に播種し、以後肉色や栽培適性による選抜を進め、平成6年の生産力検定予備試験で有望と判定し、「島系578号」の系統名を付しました。平成7年より生産力検定試験および系統適応性検定試験等に供試し、優れていると評価されましたが、平成10年にウイルス罹病のため試験を中断、ウイルスフリーの種いもを増殖し、平成11年より育成地で生産力検定試験を再開し、翌12年より「北海88号」の地方番号を付して、北海道の奨励品種決定調査、同13年より同現地試験に供試し、生食用品種としての実用性について検討してきました。これらの結果、平成14年度夏畑作物品種審査会において、置き換え対象を「男爵薯」と「インカパープル」の一部とし、命名登録されることとなりました。
 北海道の作付面積は、数haと考えられます。

(2)形態的特性

 茎長は「男爵薯」よりも長く「インカパープル」より短い“やや長”で、茎色は“紫”です。茎の太さは「男爵薯」より太く「インカパープル」並の“太”に属する。分枝数は“少”、そう性は“やや直立”です。葉は「男爵薯」と同じ“濃緑”ですが小葉の大きさは「男爵薯」及び「インカパープル」より小さく“小”、小葉着生の粗密は“中”です。開花数は“中”で、花色は“白”。自然結果は“稀”です。いもの形は“倒卵形”で皮色は“紫”、目の深さは“浅”です。肉色は一次色が“紫”でインカパープルよりやや濃く、二次色が“白”です。
 地上部の特性は、茎色が紫であること、小葉の大きさが「男爵薯」および「インカパープル」より小さく形が細いこと、花色が白いことから、「男爵薯」や「インカパープル」と区別できます。いもの特性では、皮色と肉色の一次色は「男爵薯」と異なり「インカパープル」と同じ紫ですが、倒卵形であることから「インカパープル」と区別できます。

(3)生態的特性

 茎葉の熟性は、熟性は「男爵薯」よりも遅く、「インカパープル」並の“中晩生”です。塊茎の早期肥大性は「男爵薯」より遅く「インカパープル」より早い“中”です。上いも重及び中以上いも重は「男爵薯」や「インカパープル」より多い“中”です。上いも数は「男爵薯」より少ない“少”で、上いも平均一個重は「男爵薯」及び「インカパープル」より大きい“大”です。
 「インカパープル」に比べて、茎長は短く、いもの一個重は大きく、収量が多く、いもの肥大が早いことから、「インカパープル」より栽培しやすい。

(4)病害虫抵抗性

 葉巻病の病徴は強く現れます。Yモザイク病抵抗性は「男爵薯」並の“弱”です。疫病圃場抵抗性は「男爵薯」より強い“中”、疫病による塊茎腐敗抵抗性は「男爵薯」よりも強い“やや強”です。そうか病抵抗性は「男爵薯」及び「インカパープル」並の“弱”です。粉状そうか病抵抗性は「男爵薯」より強い“やや強”です。
 ジャガイモシストセンチュウ抵抗性遺伝子(H1)を有し、汚染地での栽培では同線虫の密度を低減し、未発生地では汚染の拡大を未然に防ぐ効果があります。

(5)品質特性

 褐色心腐と中心空洞は「男爵薯」や「インカパープル」より少ない“無”で、内部異常はほとんどありません。二次生長は“少”です。でん粉価は「男爵薯」より高く「インカパープル」より低い“中”です。
 用途は“調理用”です。水煮による煮崩れの程度は「男爵薯」及び「インカパープル」より少ない“少”で、調理後の肉質は“やや粘質”です。チップ・フライの褐変程度は「男爵薯」並の“中”で油加工適性はやや不適〜不適です。食味は「男爵薯」より劣る“中”です。調理加工適性は、水煮は「インカパープル」よりやや優れるが油加工適性はやや劣り、総合的には「インカパープル」並です。
 アントシアニン色素について、主色素は「インカパープル」と同じペタニンです。完熟いものアントシアニン含量は、「インカパープル」より高い。また、いもの大きさや熟度の違いによる色素含量のばらつきが少ないため、肉色の安定性が高い。これらのことから、「インカパープル」より色素含量や肉色ばらつきが少ないことが優れています。

(6)栽培上の注意

・ 紫皮のため、土塊と塊茎、また、緑化や腐敗等の見分けが難しいので留意する。
・ 休眠期間が比較的長く、頂芽優勢が強いため、頂芽の損傷により萌芽の不揃いを生じやすい。浴光育芽時には芽を伸ばしすぎないようにし、種いもの切断に注意する。
・ 生育後半に葉が巻く症状がでることがあるが、生理的なものである。



文献及び関連Web

森元幸・高田明子・小林晃・津田昌吾・遠藤千絵・梅村芳樹・高田憲和・米田勉・木村鉄也・中尾敬・吉田勉・百田洋二・串田篤彦・植原健人・椎名隆次郎・林一也 (2009).有色バレイショ品種「キタムラサキ」,「ノーザンルビー」および「シャドークイーン」の育成.育種学研究.11(4):145-153

高田明子・森元幸・小林晃・津田昌吾・高田憲和・梅村芳樹・中尾敬・吉田勉・木村鉄也・米田勉・百田洋二・串田篤彦.紫肉ばれいしょ新品種「キタムラサキ」(北海88号)”.平成14年度 新しい研究成果−北海道地域−.71-74(2004.3)

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