ゆきつぶら

登録番号 農林認定 ばれいしょ農林54号 2005.9.15
種苗法  第16449号 2008. 3.13
北海道優良品種 ばれいしょ北海道第43号 2005. 3.31
地方番号 北育 1号   (1999) 
系統名 根系104号 (1998年より北見農試で選抜)   
系統番号 K91052-3    
組合せ  Pentland Dell×とうや (1991 根釧農業試験場) 系譜図

 (北見農業試験場) 草姿 (北見農業試験場)  塊茎 (北見農業試験場)
 
塊茎
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用途 生食用(業務加工用)
長所
  • ジャガイモシストセンチュウ抵抗性である。
  • 早生白肉で「男爵薯」より収量が多い。
  • 「男爵薯」より中心空洞、打撲黒変の発生が少 ない。
  • 調理品質が優れサラダ適性がある。
短所
  • 上いも平均一個重がやや小さい。



(1)来歴

 「ゆきつぶら」は、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ高品質な早生の生食用品種の育成を目標として、スコットランド作物研究所(Scottish Crop Research Institute)で育成された、高品質多収の生食用品種「Pentland Dell 」を母、北海道農業試験場(現 独立行政法人 北海道農業研究センター)で育成されたジャガイモシストセンチュウ抵抗性遺伝子H1を2重に持つ早生の生食用品種「とうや」を父として、平成3年(1991)に北海道立根釧農業試験場にて人工交配を行い、翌年実生個体選抜試験に供試した中から育成されました。第2次個体選抜試験の後に「K91052-3」の系統名を与え、系統選抜試験、生産力検定予備試験、生産力試験と選抜を進め、その間北海道農業試験場および北海道立中央農業試験場にてジャガイモシストセンチュウ抵抗性に関しての検定および選抜を行いました。平成10年からは馬鈴しょ科移転に伴い、北海道立北見農業試験場にて選抜を進め、「根系104号」の系統名で生産力検定試験、道内関係機関の系統適応性検定試験、地域適応性検定試験並びに特性検定試験に供試しました。その結果、枯凋期が早く多収であり、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つことから、平成11年に「北育1号」の地方番号を付して奨励品種決定調査等(農試)に供試し、平成12年から奨励品種決定調査(現地)に供試して実用性を検討し、平成16年度北海道農業試験会議において北海道の優良品種(普及奨励)への採用、平成16年度夏畑作物品種審査会において命名登録が決定し、平成17年9月に「ゆきつぶら」の名で命名登録されました。

系譜図


(2)形態的特性

 そう性は「男爵薯」と同様“中間型”です。茎の長さは「男爵薯」より長い“中”、茎の太さは「男爵薯」並の“中”です。茎の色の1 次色は“緑”、2 次色は「男爵薯」の“赤紫”に対して“無”です。分枝数は「男爵薯」と同様“少”です。葉色は「男爵薯」の“濃緑”に対して“緑”、頂小葉及び小葉の大きさは「男爵薯」より小さい“中”です。花の数は「男爵薯」より少ない“少”、花の大きさは「男爵薯」並の“中”、花色は1 次色が“白”、2 次色は“無”です。花粉の多少は「男爵薯」より多い“中”で、結果数は「男爵薯」の“無”に対して“中”です。ふく枝の長さは「男爵薯」より長い“中”、いも着生の深浅は「男爵薯」より深い“中”です。いもの形は「男爵薯」の“球”に対し“扁球”、皮色は「男爵薯」と同様“白黄”、表皮の粗滑は「男爵薯」並の“中”、目の深浅は「男爵薯」より浅い“やや浅”で、肉色は“白”です。

(3)生態的特性

 “早生”に属しますが、枯凋期は「男爵薯」より数日遅い。初期生育は「男爵薯」と同様“やや速”、早期肥大性は「男爵薯」より遅い“やや遅”、上いも数は「男爵薯」並の“中”、上いも平均一個重は「男爵薯」よりやや小さい“小”、上いも重・中以上のいも重は「男爵薯」よりも1〜2割多い“やや少”、でん粉価は「男爵薯」よりやや高い“低”です。休眠期間は「男爵薯」と同様“やや長”です。褐色心腐は「男爵薯」並の“微”、中心空洞は「男爵薯」より少ない“微”、 二次生長は「男爵薯」並の“微”です。

(4)病害虫抵抗性

 Y モザイク病抵抗性は「男爵薯」と同様“弱”、疫病抵抗性遺伝子型は“R2”と推定され、現在は疫病の発生がほとんど見られませんが、新レースの出現により抵抗性が打破される可能性があります。塊茎腐敗抵抗性は「男爵薯」の“弱”に対して“強”、そうか病抵抗性及び粉状そうか病抵抗性は「男爵薯」と同様“弱”です。ジャガイモシストセンチュウ抵抗性遺伝子“H1” を有すると推定され抵抗性は“強”で、汚染圃場の線虫密度を大きく減らすことが可能です。

(5)品質特性

 剥皮褐変は「男爵薯」より少ない“微”、水煮調理後の肉質は「男爵薯」の“やや粉質”に対して“やや粘質”です。煮崩れの程度は「男爵薯」より少ない“少”、調理後黒変の程度は「男爵薯」より少ない“微”、舌触りは「男爵薯」よりやや滑らかです。チップ・フライの褐変程度は「男爵薯」より多い“多”です。食味は“中上”で、「男爵薯」より甘味が強い。用途は“調理用”で、煮物に最適ですが、澱粉価が「男爵薯」並に高いので、一般的な青果用の用途に汎用性があります。また業務加工用においても、サラダやチルド製品等に適性があります。

(6)適地及び栽培上の注意

普及見込み地帯:北海道の生食用ばれいしょ栽培地帯

・除草剤メトリブジンを植え付け後に散布すると、薬害を生じる場合がある。
・疫病抵抗性であるが、抵抗性を侵す新レース出現の可能性があるため「男爵薯」に準 じた防除を行う必要がある。
・「男爵薯」より塊茎の維管束褐変が発生しやすい傾向があるので、乾燥しやすい圃場で栽培する場合は注意する。

育成従事者

入谷 正樹、伊藤 武、村上 紀夫、松永 浩、千田 圭一、関口 建二、大波 正寿、池谷 聡、藤田 涼平
土屋 俊雄、兼平 修




文献及び関連Web

池谷 聡・藤田涼平・伊藤 武・入谷正樹・村上紀夫・松永 浩・千田圭一・関口建二・大波正寿・土屋俊雄・兼平 修.バレイショ新品種「ゆきつぶら」の育成.道総研農試集報 95, 13-24 (2011)

池谷 聡・藤田涼平・伊藤 武・入谷正樹・村上紀夫・松永 浩・千田圭一・関口建二・大波正寿・土屋俊雄・兼平 修.“早生白肉の生食用ばれいしょ新品種候補 「北育1号」”.平成16年度 新しい研究成果-北海道地域-.76-79(2005.7)

ばれいしょ新品種候補「北育1号」 (農業技術情報広場

早生・白肉でサラダ適性のあるばれいしょ新品種「ゆきつぶら」 (作物研究成果情報(2005))

早生・白肉でサラダ適性のあるばれいしょ新品種「北育1号」 (研究成果情報 北海道農業(2005))



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