原品種名:Sirtema
オランダで育成された品種です。川上幸治郎氏が兵庫農科大在職中の昭和38年(1963)にフランスから輸入したものを昭和40年(1965)に岡山県立農業試験場が譲り受け、同年春作から3年6作にわたり試験を行った結果、休眠期間が短くて二化性としても十分利用でき、早熟で食味が良いことなどから、昭和43年(1968)年に岡山県の春作向き優良品種に決定しました。
当時の新病害であったPVAに汚染していたことから普及には至りませんでした。
(2)特性
国塩忠美.“バレイショ新品種「シルテーマ」”.農業および園芸.43(7):113 (1968) からの引用
(1)地上部の特性
春秋ともに発芽はせいいつであり、目は濃紫色でやや細い。草姿はやや広がり小葉は丸味をおびるが着生はわずかに粗である。葉面は波状を呈し生育の後期には光沢をもち、毛じはない。花色は白で着生は少なく、春作では開花をみるが秋作では開花しない。
(2)地下部の特性
根はやや細く、根数は少ないが深く伸びる。しかし、根の再生力は弱いので移植栽培の場合は幼苗移植を行う必要がある。ふく枝は短く芋着きも密ではあるが、過湿状態になるとふく枝は伸びやすくなる。芋数は株あたり4〜5個であり、初期の肥大が早く成熟も早い。
(3)塊茎の特性
休眠は短い。ただし、農林一号より2〜3日長い。芋には美しい光沢があり、卵形を標準形とする。表皮は淡黄かつ色で皮むけしにくく、目が浅く全体に美しいので商品価値はきわめて高く、輸送性にも富んでいる。
肉色はシマバラ、チヂワなどと同じく鮮黄でみずみずしい。でん粉価は中(12〜13%)であるが、舌ざわり食味ともよく、調理の途上で肉くずれしないことが長所である。欠点としては光線による緑化にやや敏感なので、掘取り後の貯ぞうには注意する必要がある。
(4)貯蔵性
春作では多収を示すが秋作ではわずかに低下する。これは植付け期の高温乾燥が本種に悪影響を及ぼすものと考えられる。したがつて、植付け期を早くするよりも、早熟性を生かして9月15〜20日ごろに植えたほうがよい。
(5)耐病性
疫病にはやや弱いが栽培管理で回避できる。ウイルス病のうち漣葉モザイクには弱いが、葉巻きウイルスにはかなり強い。その他、特別に問題となる病害はない。
国塩忠美.“バレイショ新品種「シルテーマ」”.農業および園芸.43(7):1165 (1968)
岡山県農業総合センター農業試験場.“農業試験場100年誌”.岡山県農業総合センター農業試験場臨時報告85.(2001.3)