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(1)来歴
昭和24年、九州農業試験場指宿試験地で兼六を母に農林7号を父として交配された種子を、翌25年、関東東山農業試験場千葉試験地で実生した材料の1系統である。その後続いて同試験地で選抜を行い、昭和29年関東39号の系統名で関係都県に配布、
地方適否生産力を検討してきたが、早堀生食用専用種としてすぐれた特性が認められ、昭和35年、「くりまさり」の品種名で登録された。
(2)形態的特性
茎葉の繁茂は中程度だが、茎長はやや短く緑色で葉は大きく濃い緑色で、頂葉色は淡紫褐色である。いもは長紡錘形で外皮は紫紅色、肉色は黄白色である。蒸いもの肉質は極粉で繊維が少なく均質である。
(3)生態的特性
萌芽はやや遅いが、その後の伸長は良い。農林1号などにくらべて、育苗は比較的高温の方が良い。
(4)病害虫抵抗性
ネコブセンチュウには弱いが、黒斑病に対しては中〜やや強である。
(5)栽培上の注意
高温で、やや痩せた乾燥地に適し、肥沃地や湿地ではいもの形が長くなったり、くびれができたりしてすぐれた品質のものが出来にくく、砂地ではいもの形が崩れやすい。また、掘取適期を失したり、長期貯蔵すると品質が劣るので計画的な栽培ないし出荷が必要である。
(6)用途
早堀食用としてすぐれた食味を示し、とくに関東南部では8月中旬〜9月上・中旬の品質は何れの品種にも見られなかったほど良い食味を示す。しかし、これより遅くなると逐次、品質が低下し、また掘取後変質しやすい欠点がある。現在、神奈川県平塚市で地域特産作物としてわずかに栽培されている。