ときまさり(農林63号)


(1)来歴及び特徴
 「ときまさり」(農林64号)は、高でん粉・多収の「九州111号」を母、極高でん粉・多収の「コナホマレ」を父とする交配組合せにより(独)九州沖縄農業研究センターで育成された。名前の由来は、いもの皮色が鴇色(極淡紅色)で飲むとときめくような焼酎ができることによる。

 焼酎醸造時の原料当たりの純アルコール収得量が標準品種の「コガネセンガン」より多く、醸造した焼酎は軽快な甘味とコク、いもの香りが強いといった特徴のある酒質を示す。また、サツマイモネコブセンチュウ抵抗性が優れ、でん粉歩留が高く、いも収量は「コガネセンガン」並で、いもの貯蔵性は良好である。宮崎県北郷町や鹿児島県志布志町などで焼酎用品種として普及に移され、宮崎県内の酒造場で製品化されている。

注: 

 焼酎用の主力品種である「コガネセンガン」は、その焼酎の独特のいもの香りや甘みが実需者から高く評価されていますが、焼酎需要を維持・拡大するため、酒質の多様化を図る動きがあり、実需者からは「コガネセンガン」と酒質が異なる個性的な焼酎を醸造できる品種への期待が高まっていました。また、コガネセンガンはいもの貯蔵性が悪く、線虫にも弱いため、原料の安定供給という面から問題が指摘されています。こうした要望に応えるため、いもの貯蔵性や線虫抵抗性に優れた醸造適性の高い品種として「ときまさり」を育成しました。

(2)形態的特性
 しょ梗の長さ及び強さは「中」、掘取難度は「中」、いもの形状は「短紡錘形」で大きさは「やや大」。条溝は「少」で裂開は「微」、皮脈は「少」で、いもの皮色は「極淡紅」で肉色は「淡黄白」である。

(3)生態的特性
 萌芽性は「やや良」、育成地における上いも重は「コガネセンガン」や「シロユタカ」並である。切干歩合、でん粉歩留は「コガネセンガン」や「シロユタカ」よりも1〜4ポイント高く、でん粉重は「コガネセンガン」や「シロユタカ」を上回る。

(4)病害虫抵抗性
  サツマイモネコブセンチュウ抵抗性は「やや強」、ミナミネグサレセンチュウ抵抗性は「中」で「コガネセンガン」より優れ、黒斑病抵抗性は「やや弱」である。貯蔵性は「やや易」で「コガネセンガン」や「シロユタカ」より優れる。

(5)品質特性及び加工適性
 でん粉白度は「コガネセンガン」や「ダイチノユメ」と同程度で、蒸しいもの食味は「下」である。

(6)栽培上の注意