紅赤(べにあか)


(1)来歴
 明治31年、埼玉県の山田イチ氏が、八房の中から見いだした芽条変異系統である。一般には金時の名前で呼ばれているが、埼玉県では「川越イモ」の別名があるほど、川越地方のサツマイモの評判を高めた有名な品種である。近県の千葉、神奈川、東京、茨城の各県で、それぞれ千葉赤、大正赤、高座赤、茨城赤などの名称で栽培が増え、一時は3万6千haに及び、西の源氏に対し、東の重要品種となった。形態的には最も古い形のもので、青木星陽時代のおもかげを残す唯一の品種とみられる。戦中・戦後は食糧増産品種のかげにかくれ、一時作付けは急減したが、その後再び市場販売用として増加し、埼玉・千葉両県を中心に特産地を形成し、東京市場で銘柄イモとして復活した。しかし、最近はベニアズマの普及により栽培面積が減少している。

(2)形態的特性
 イモは長紡錘形で揃いがよい。皮色は紫紅で美しく、肉色は黄色で粉質、口当たりがよく味もよいので、「きんとん」や「あん」の材料としても使われる。

(3)生態的特性
 萌芽および伸長は中程度、ツルは長く伸長する。晩植適応性や耐肥性はきわめて低く、土壌に対する適応性も小さく栽培の困難な品種である。

(4)病害虫抵抗性
 耐病虫性は小さく、貯蔵が困難で、貯蔵後の晶質低下がいちじるしい。

(5)栽培上の注意
 適地は土の軽い関東洪積台地である。イモの肥大をよくするためには疎値がよい。

(6)用途