馬鈴薯農林1号

登録番号 農林認定 ばれいしょ農林1号 1943. 5
種苗法 
北海道優良品種 ばれいしょ北海道第4号 (1943-)
1971. 6.17
2016廃止
地方番号  
系統名 島系12号    
系統番号 3702-2  
組合せ 男爵薯×Deodara (1937 北農試本場) 系譜図

農林1号 花 農林1号 草姿 農林1号 塊茎
花 (北見農試 2007) 草姿 (北見農試 2007) 塊茎 (北見農試 2007産)
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用途 兼用 【食用・加工食品用(ポテトチップ)・澱粉原料用】
長所
  • 大粒、多収、広域適応性。
  • リコンディショニング処理により還元糖を比較的低下させやすい。
  • 青枯病に強い。
短所
  • 調理後黒変が多い。
  • 澱粉粒子が小さく、糊化特性も劣る。
  • ジャガイモシストセンチュウに感受性。

(1)来歴

 昭和12年(1937)北海道農事試験場(現 (国立研究開発法人) 農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター)本場において男爵薯」を母、「Deodara」を父として交配した種子を、翌13年(1938)島松馬鈴薯玉蜀黍試験地における農林省指定酒精原料作物試験地(農林登録時には北海道農業試験場島松馬鈴薯試験地に改称)に配付し、以後同地において選抜を行ない育成されたものである。昭和18年(1943)に新品種として登録され、ばれいしょとして農林省に登録された第1号であることから「馬鈴薯農林1号」と命名された。
 育成地の北海道をはじめ、多くの都府県が奨励品種に採択し、かつては全国で栽培された。休眠が比較的短く適応性が広いため、西南暖地において春秋二作を可能にし、秋作に有利な経済性を付与した最初の品種となった。
 食用の他、ポテトチップ原料や澱粉原料にも用いられる兼用品種で、昭和40年(1965)頃には北海道で40,000ha以上、全国では52,767ha作付されていた。専用品種の普及に伴い作付けは著しく減少し、全国における平成24年(2012)産の作付面積は、春・秋合わせて281ha(うち257haは北海道)まで減少した。北海道での作付面積は平成25年(2013)年に218ha、平成26年(2014)には100haを割り、北海道の品種別作付面積の公表対象から外れた。
 平成28年(2016)には北海道の優良品種から廃止された。
 わが国の育成品種には、「農林1号」が直接の親品種になっているもの(「オオジロ」、「ウンゼン」、「タチバナ」、「ヨウラク」、「ニセコ」、「リシリ」、「シマバラ」)や近い祖先に「農林1号」が関与しているものが多数あり、遺伝資源としても重要な役割を果たした。
系譜図

(2)形態的特性

 幼芽の色は淡赤色で、萌芽時の葉色は「男爵薯」と同様に紫色を帯びる。茎の長さは「男爵薯」より長く「紅丸」よりやや短い中、茎翼はやや波状を呈する。茎色は緑に赤紫の2次色が斑紋状に分布する。そう性はやや直立型で草勢は強く、分枝は「男爵薯」より多い中である。葉色は「男爵薯」よりやや濃い緑で、小葉の形及び大きさは「男爵薯」よりやや狭く小さい中で、粗剛にみえる。小葉の着生は「男爵薯」よりややまばらの中で、葉の毛茸は多い。花色は白で、花冠の形は「男爵薯」よりやや鈍角である。花数は多い。花粉の量は中で、自然結果は少程度みられる。
 いも着生の深浅は「男爵薯」より深い中である、ふく枝が短くいも着が密で粒ぞろいも良好なので収穫は容易である。いもの形は「男爵薯」よりやや扁平な扁球形である。皮色は白黄色で、表皮の粗滑は中でネットは無い。目の深さは「男爵薯」よりやや浅い中に属し、目の数は「男爵薯」よりやや少ない。肉色は白である

(3)生態的特性

 休眠期間は「男爵薯」より短いやや短に属することから、かつては暖地の二期作用としても栽培された。萌芽は比較的遅く初期生育もやや貧弱だが、生育盛期に入ると伸長は著しくなる。いもの着生および初期肥大性は「男爵薯」や「紅丸」よりやや劣る傾向にあるが、肥大盛期に入ると肥大速度は極めて速くなる。開花期は「紅丸」より早く、「紅丸」より早く終花期になる。北海道では9月下旬〜10月上旬に枯凋期となる中晩生に属しており、「紅丸」より数日早いことが多い。
 上いも数はそれほど多くないが、中〜大いもが多く、上いも平均一個重が大きいので、上いも収量は「紅丸」に近い多収を示す。澱粉価は16〜17%で、「男爵薯」より高い中です。澱粉収量は「紅丸」よりやや少ない中である。

(4)病害虫抵抗性

 PVY-Oによる病徴はえそ型で、第1次病徴は接種葉に明瞭なえそ斑点が現れ、やがて全身病徴としてえそ斑点、条斑えそおよび頂部モザイクを現す。また、第2次病徴は下葉にえそ斑点を現し、のちに条斑えそとなり、葉が枯死、落下し、さらに植物体上部にはモザイクを伴う。PVY-Tによる第1次病徴は、接種葉にわずかな斑点かとすじ状えそを現し、全身にはえそか葉の裏にわずかな脈えそを現す。第2次病徴は、ごく軽いれん葉症状ないしモザイク症状を現すが、畑では開花より遅れて葉の裏に筋状えそがみられることがある。PVAには「男爵薯」と同様に感染しない。PVXには「男爵薯」と同様、PVX-o、PVX-bの両系統に感受性である。PVSのモザイク系統には「男爵薯」同様、弱いモザイク症状を現す。葉巻病には一般品種並に弱く、接種による第1次病徴は、展開葉が淡黄色となり、3〜4日後に小葉の基部や周縁部が赤味を帯び上向きに巻き、「男爵薯」より頂部の立型が著しくなる。
 疫病抵抗性主働遺伝子(R遺伝子)は持っていないが、疫病圃場抵抗性は「紅丸」よりやや強い。疫病による塊茎腐敗抵抗性は「男爵薯」より強く「エニワ」や「紅丸」より弱い中である。青枯病には強く、国内の品種の中で最も強い方に入る。粉状そうか病の発生は「男爵薯」よりやや少なく、抵抗性は中に属するが、そうか病には一般品種並に弱い。軟腐病に対する抵抗性は「男爵薯」程度の中である。
 ジャガイモシストセンチュウには感受性である。ミナミネグサレセンチュウには「男爵薯」より弱い。
 二次生長は熟期が遅い割には少ない。中心空洞は大いもに発生しやすいが「男爵薯」より少ない微に属し、褐色心腐は「男爵薯」よりやや多い少に属する。黒色心腐は「男爵薯」より発生しやすく弱いとされている。

(5)品質特性

 食用、加工食品用(ポテトチップ)、澱粉原料用に使うことができる兼用品種である。
 剥皮後の褐変は「男爵薯」並かやや少ないが、食用品種としては多い。水煮後に鉄イオンとクロロゲン酸の反応による調理後黒変が中程度みられ、食用品種としては最も発生しやすいのが大きな欠点である。食味はいも臭が強く「男爵薯」よりもやや劣る中である。
 チップ・フライの褐変程度は「トヨシロ」より多い中である。収穫直後から貯蔵中期の還元糖含量は特に少ない方ではないが、加温処理で還元糖含量を比較的下げやすいので「Snowden」が普及するまでは貯蔵中〜末期のポテトチップ原料用として使われていた
 澱粉品質は、リン含量は少ない方だが、澱粉の平均粒径は「コナフブキ」よりさらに小さく糊化したときの最高粘度は「紅丸」より低く最高粘度時の温度は「紅丸」より高いなど総じて劣るとされる

(6)栽培上の注意

・畦幅、株間は「男爵薯」より若干広めでよく、中心空洞の出やすい畑では、窒素の過用や疎植を避け、植付時期が遅れないようにする。
・調理後黒変を少なくするには、窒素は少なめ、りん酸とカリは多めとし、できるだけ生育を促進させて完熟を待ち、地温があまり下がらないうちに収穫する。
・浴光催芽の際に、温度が高くなると黒色心腐が発生し、減収につながりやすいので注意する。

育成従事者

田口啓作、鈴木美代七、西村昌造、和田忠男、江口俊一、徳本尚史

奨励品種に指定している都道府県(平成24年)

北海道(平成28年廃止)、山梨、富山


文献及び関連Web

ばれいしょ農林1号 (農林認定品種データベース Agriknowledge)

農林省農業改良局研究部 (1954).「馬鈴薯農林1号」 『甘藷、馬鈴薯の新品種(其の一)』.農業改良技術資料41:63-65

北海道農業試験場 (1943).「馬鈴薯新優良品種「馬鈴薯農林一号」の特性」 『北海道農業試験場時報』.177:1-6

田口啓作 (1943).「馬鈴薯新優良品種「馬鈴薯農林一号」の特性」 『北農』.10(11):317-322

北海道立農業試験場 (1952).「16 馬鈴薯」 『主要農作物優良品種の解説』.pp.153-167

田口啓作 (1963).「V. 馬鈴薯の栽培」 『作物体系 第5編 いも類』.養賢堂.p.25

ばれいしょ品種の形態及びウイルスの病徴 (1) (独立行政法人種苗管理センター

品種PROFILE 農林1号 (カルビー株式会社 品種紹介)

ジャガイモ品種「農林1号 (浅間和夫 ジャガイモ博物館
鯉のエサによい農林1号 (浅間和夫 ジャガイモ博物館 ポテトエッセイ第20話)





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