白独逸

異名:独逸白、稚内薯、勇知薯、兜沼薯、天塩薯、樺太薯

(1)来歴

 来歴は明らかではありませんが、北海道の北部に栽培が多かった品種です。
 奨励品種ではありませんでしたが、昭和4年(1929)には北海道のばれいしょ作付の5%を占めており、昭和10年(1935)には3%、昭和16年(1941)には2%に減少したものの、終戦直後もごくわずかながら栽培されていたようです。
 なお、異名に挙げられている「勇知薯」は、サハリン(旧樺太)から渡来した「ノーザンスター」という来歴不明の品種が、昭和のはじめ頃に宗谷管内の上勇知地方に作付され、関東・関西市場に出荷され「勇知薯」と呼ばれ好評を博したものです。
 数年前に、勇知地方で昔をなつかしんで「勇知薯」の名前でいもが販売されたと新聞にも取り上げられましたが、これは「農林1号」とのことです。


川上幸治郎.“馬鈴薯の栽培及利用”.大日本農会.(1939) p.74
 来歴明ならざるもヴアイラス病に稍々抵抗性で,主として北海道北部に栽培せらる品種である。薯は黄白色・楕円形で,煮崩れなく主として副食用に好適する。

川上幸治郎.“馬鈴薯通論”.養賢堂.(1948) p.62
 白ドイツ 来歴は明らかでないがヴァイラス病にや強い。北海道の北部に栽培が多い。薯は黄白色,楕円形で煮くずれなく副食に適する。



山崎俊次.“馬鈴薯の品種と其の特性”.北農.3(9),349-351(1936)
 白独乙は独乙白とも呼ばれ、稚内薯、勇知薯、兜沼薯、天塩薯、樺太薯等は総てこの系統に属する。


“北海道主要農作物耕種法シリーズ No.V ばれいしょ”.北農会.(1980.3) 北海道における馬鈴薯(ばれいしょ)栽培年表 p.109 昭和元年(1926)の欄には
 「ノーザンスター」(樺太から渡来)が稚内の上勇知地方に作付けされ,関東・関西市場に出荷され「勇知薯」と呼ばれて好評


酒井勉.“農産物品種物語 みのりへの道 上巻”.日本農業新聞北海道支所 (1989.12) p.77
 宗谷管内で食用向けの「北星」が広がったが、樺太から渡ってきた品種で来歴は不明。


Salaman, R. N. "Potato Varieties". Cambridge (1926) p.294 には、"Northern Star"という品種の特性の記述がありますが、同一の品種か定かではありません。育成者のA. Findlay はドイツ人ではなくスコットランド人であり、"Northern Star"は“ドイツ”のイモではないようです。
HISTORY: Raised by Mr A. Findlay. Parentage not disclosed. Introduced by Mr A. Findlay, 1900.



文献及び関連Web

山崎俊次.“馬鈴薯の品種と其の特性”.北農.3(9),349-351(1936)

“北海道主要農作物耕種法シリーズ No.V ばれいしょ”.北農会.(1980.3)

酒井勉.“農産物品種物語 みのりへの道 上巻”.日本農業新聞北海道支所 (1989.12)

川上幸治郎.“馬鈴薯の栽培及利用”.大日本農会.(1939)

Salaman, R. N. "Potato Varieties". Cambridge (1926)




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