日本いも類研究会では、ジャガイモの新品種を中心としたユニークな品種をPRし、普及を図るための試験栽培を行っています。

試験栽培の目的

ジャガイモとサツマイモ!どちらも歴史的には新しい「おいも」です。本当は食物繊維とビタミン、そしてミネラルに富む機能性食品ですが、これまでは救荒作物としてのイメージが強かったのではないでしょうか。
青果用、加工食品用、でん粉原料用など、幅広い用途に利用され、それぞれ専用の品種があります。近年では機能性食品としての適性も重要になり、アントシアニン(紫)やカロチノイド(オレンジ)などの色素を多量に含んだ品種も育成されています。

新しい品種は、品質や成分、貯蔵性、病害虫抵抗性などが従来の品種よりも優れてなければなりません。何万~何十万もの交配からたった1つの品種が選抜されるのに10年もの年月がかかるそうです。
でも、このように苦労して育成された新品種も、消費者や加工食品メーカーにその美味しさ、特性の素晴らしさを知ってもらわないと売れません。
一方、市場・流通業界では、これまではメジャー品種(じゃがいもでは男爵薯とメークイン、さつまいもではベニアズマなど)を取扱っているだけで商いができました。実際のところ農家が新品種に取り組んで出荷しても買叩かれることが多かったようです。
出荷しても儲からないものは誰も作りません。作らなければ消費者も試食の機会がないわけです。このように、新品種についての情報の輪がつながらないのです。
さらにジャガイモの場合には厄介なことに、種いもの増殖に5年程度の年月がかかります。新品種が発表されてもすぐには種いもが手に入らないという事情があるわけです。

このような背景もあって、せっかくの新品種が消費者から評価される機会も与えられないのはあまりにも残念です。

できるだけ多くの人に素晴らしい品種、ユニークな品種があることを知って欲しい! 
そして消費者と流通・加工関係者、そして生産者の間をつなぐ情報の輪をつくりたい!
これが日本いも類研究会(JRT)による試験栽培の基本的なスタンスです。

これまでの経緯

ジャガイモやサツマイモは、他の作物にはない特徴があります。栽培しやすくて手軽に料理できるのです。市民農園では人気No.1! 小学校では授業の中でも取組まれています。

平成8年に NIFTY-Serve の「農と食のフォーラム」で提案したところ大きな反響がありました。 平成9年にはジャガイモ3品種(キタアカリ、ベニアカリ、とうや)、甘しょ3品種(アヤムラサキ、ヘルシーレッド、ベニオトメ)について取り組みました。
この時は種いもや苗代は無償ということもあり、 700~1000人の参加を得ることができました。その後、日本いも類研究会の創設に伴って、10年の試験栽培から研究会の事業として実施することにしました。
試験栽培の実施には、様々な媒体を通じてのPR、参加者の確認、種いもや苗の手当、梱包、配送など膨大な作業が必要ですが、ボランティアでの活動には限界があります。このため、多くの企業や関係者のお世話になりながら試行錯誤を繰返してきましたが、11年の試験栽培から賛助会員のトキタ種苗(株)と三好アグリテック(株)のご厚意により実務を担当いただき実施してきました。

しかしながら、近年、さつまいもについては、苗の通販等にが行われるようになり、品揃え、価格についても充実傾向にあります。一方、じゃがいもについては、小分けした場合でも植物防疫法に基づく検査合格証票の添付が必要であること、増殖に年数がかかることなどから新品種の出回りが少ない状況にあります。このため、じゃがいもについては、従来の小分けシステムでは検査合格証票の確保が難しいことから平成19年から休止してきたところです。

こうした状況を踏まえて、21年の試験栽培では、さつまいもについては中止し、じゃがいもについて再開することとしました。種いもについては、産地段階で事前に小分けにより検査合格証票を確保するとともに、十勝農業協同組合連合会の御厚意により一括委託し、作業の合理化や売れ残りリスクを回避することとしています。
試験栽培は種いもや苗、送料は参加者負担、参加者は自分で栽培して、作りやすさや食味を評価するというシステムです。参加の際の条件という訳ではありませんが、評価の結果をレポートしていただけると有り難いです。