VII 外食産業が求めるじゃがいも

今後、じゃがいもの需要が伸びるか否かは、ファーストフード、ファミリー レストラン、ホテル、セントラル・キッチン等、多様な業態を持つ外食産業において、じゃがいもがどの程度利用されるかということにかかっているといっても過言ではないでしょう。ここでは、外食産業からみた「望ましいじゃがいも」について検討してみましょう。

1.外食産業における利用形態
(1)利用形態
外食産業には多くの業態があり、それぞれ固有のニーズを持っています。じゃがいもに対する需要をメニューと調達の面からみると次のようになります。

・そのままでフライドポテト、コロッケ、ポテトサラダ、ベイクドポテトなどに、
 また料理の付け合わせやカレーやシチュー等の素材として利用。
・生を使う場合には一般的には市場を通じて入手するが、
 品質を重視して産直により入手するケースや、冷凍調整品や乾燥調整品を用いる場合もある。
・チェーンレストランでは、惣菜企業から皮むき等の前処理加工したものを入手するケースが多く、
 最近では輸入冷凍調整品の利用が増加。
・フライドポテト用の材料の調達は、同じ品質の材料を大量に周年供給しなければならないため、
 アメリカからの輸入冷凍調整品が圧倒的なシェア。

2.外食産業向けに求められる品質特性と新品種
(1)品質特性
用途は多様ですが、いずれの用途にも共通して求められるのは、洗浄、剥皮が容易で目が浅く、形が整っており、内部に空洞や褐色心腐れがないことです。また、用途別の特性はフライドポテト等の油加工製品とその他一般調理用に大別されます。

【油加工用品種】

・フライ製品に褐変を生じないよう、グルコース、フラクトース等の還元糖含量の少ないこと
・乾物率(比重)が高くかつ塊茎内で均一に分布していること
・楕円~長楕円形かつ大粒で加工歩留の高いこと
・ラセットバーバンク並みの白肉であること(ホッカイコガネ、ムサマルは淡黄肉)

【その他の業務用品種】

・カット・ピール用には剥皮後の酵素褐変の少ないこと
・コロッケ、サラダ用には白肉で調理後黒変が少なく、香りが良く、乾物率が高いこと

(2)新品種の育成と普及状況
我が国の育種分野では、近年は加工食品用・業務用の品種育成に力が注がれています。その結果、平成4年以降、「とうや」(15年産普及面積730ha)、「ムサマ ル」(同78ha)、「ベニアカリ」(同60ha)、「さやか」(同682ha)、「ユキラシャ」(同3ha)、十勝こがね(同4ha)、「インカのめざめ」(同20ha)等の品種が育成されました。