(1)最近10年間に育成された農林登録品種

【オホーツクチップ】(農林52号:平成17年)「アトランチック」×「ND860-2」

  • 早生の加工原料用で、ポテトチップ適性が優れる。
  • ジャガイモシストセンチュウ抵抗性である。
  • そうか病抵抗性が中である。
  • 収量性はやや劣り、休眠は短い。

【スノーマーチ】(農林51号:平成16年)「アトランチック」×「cherokee」

  • そうか病抵抗性が強で、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ。
  • 目が浅く肉色は白。煮崩れ少なく、調理後黒変が少ない。
  • 男爵薯並みの褐色心腐れと中心空洞が発生することがある。
  • また、亀の甲病類似症状が発生することがある。

【キタムラサキ】(農林50号:平成15年)「島系571号」×「島系561号」

  • アントシアニン色素を含有し、紫肉色を生かした調理加工ができる。
  • ジャガイモシストセンチュウ抵抗性である。
  • 萌芽の不揃いを生じやすい。

【スタールビー】(農林49号:平成15年)「北海77号」×「87028-6」

  • 赤皮黄肉で良食味である。
  • また、従来の赤皮品種より貯蔵性が良い。
  • ジャガイモシストセンチュウ抵抗性である。
  • 中心空洞が発生することがある。

【アイユタカ】(農林48号:平成15年)「デジマ」×「長系108号」

  • 多収、大いもで外観に優れる。
  • 煮えやすくて味が染みやすく、肉が軟らかい。ビタミンC含有量が高い。
  • ジャガイモシストセンチュウ抵抗性である。
  • 青枯病、そうか病、疫病に弱い。

【ナツフブキ】(農林47号:平成15年)「ムサマル」×「島系544号」

  • 早掘りのでん粉重が「コナフブキ」並み。
  • 枯凋期が「コナフブキ」より一週間ほど早い。
  • ジャガイモシストセンチュウ抵抗性である。
  • 普通掘りのでん粉重は「コナフブキ」よりやや少ない。

【インカレッド】(農林46号:平成14年)「KW85093-33」×「島系284号」

  • アントシアニンの機能性が期待でき、赤肉色を生かした調理加工ができる。
  • ジャガイモシストセンチュウに感受性。

【インカパープル】(農林45号:平成14年)「KW85091-21」×「島系284号」

  • アントシアニンの機能性が期待でき、紫肉色を生かした調理加工ができる。
  • ジャガイモシストセンチュウに感受性。

【インカのめざめ】(農林44号:平成14年)「W822229-5」×「P10173-5」

  • 濃黄色の肉色で、調理時に際だつ。
  • 良食味で、栗のような風味がある。
  • 極早生で、澱粉価が高い。
  • ジャガイモシストセンチュウに感受性。

【春あかり】(農林43号:平成14年)「T8973-20」×「普賢丸」

  • そうか病抵抗性がやや強く、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性。
  • 滑皮で目が浅く、外観に優れる。
  • 生理障害や内部異常が少ない。

【ユキラシャ】(農林42号:平成12年)「Early Gem」×「86002-100」

  • そうか病抵抗性が強い。白肉で剥皮・調理時の変色が少ない。
  • いもの休眠期間が長く、貯蔵性が良い。
  • ジャガイモシストセンチュウに感受性。
  • 休眠が長いため、萌芽及び初期生育が遅い。
  • いもが裂開することがある。

【十勝こがね】(農林41号:平成12年)「R392-3」×「69095-17」

  • いもの休眠期間が長く、貯蔵性が良く、調理適性に優れる。
  • ジャガイモシストセンチュウ抵抗性。
  • 休眠が長いため、萌芽が遅い。
  • 疫病による塊茎腐敗に弱い。
  • 中心空洞が発生することがある。

【スタークイーン】(農林40号:平成12年)「Atlantic」×「Cherokee」

  • いもの表面にかさぶた状の病斑を形成して商品価値を下げるそうか病抵抗性が既存品種より強い。
  • ジャガイモシストセンチュウに抵抗性。
  • 大粒で多収。白黄色のやや粗い皮。黄白肉で中心空洞は少ない。でん粉価がやや高いので、コロッケ、サラダに好適。
  • 葉色に濃淡が生じるので、採種栽培での抜き取りに注意が必要。

【普賢丸】(農林39号:平成9年)「Atlantic」×「P-7」

  • 暖地向け品種でジャガイモシストセンチュウ抵抗性を有する最初の品種。
  • いもは皮色・肉色とも黄色。いもの形は、球形~短楕円形で全体的には目が浅く、皮むきしやすい。
  • ウイルス病にかかり難いが、収穫が遅れると春作では腐敗し易い。

【花標津】(農林38号:平成9年)「s.tuberosum ssp.andigena(W533-4)」×「R392-50」

  • 疫病に強く、無農薬でも収量や品質の低下が少ない。
  • いもは、小粒で目が深い。
  • 淡赤皮、淡黄肉。煮くずれしにくく煮物に好適。春に甘味が増す。
  • 花は大きく、きれいな赤紫色。

【さやか】(農林36号:平成7年)「ペントランド・デル」×「R392-50」

  • 中生・多収・大いもで外観・調理特性に優れ、サラダ、煮物に向く。
  • なめらかな白皮・白肉、目は浅く皮をむきやすく、1次加工や外食産業むけに最適。
  • 光を浴びても緑化しにくく、えぐ味の原因であるグリコアルカロイドの生成が少ない。
  • 大いもで粒揃いがよいため、密植にして多肥を避ける。

(2)平成6年以前に育成された主な農林登録品種

【アイノアカ】(農林35号:平成6年)「デジマ」×「ノーランド」

  • 赤皮・良食味の個性的な品種。皮色が淡赤で目が浅く、いもの粒揃いは良、二次生長が少なく、外観に優れる。
  • 食味は「デジマ」並みに良く、煮崩れが少ないので煮物に適向き、暖地で穫れる品種の中ではフライにも一番適する。
  • 早生で地上部がコンパクトにまとまっているので管理しやすく、そうか病や青枯病に対して「デジマ」に比べやや強く、また塊茎腐敗も少ない。

【ベニアカリ】(農林33号:平成6年)「北海61号」×「R392-50」

  • 中生・多収・赤皮粉質の新品種。
  • 栽培は湿地を避け、倒伏防止に十分な培土を行う。
  • 赤皮でやや偏平、肉色は白、でん粉の多い粉質で、煮崩れしやすいがコロッケに最適、皮ごとすりおろして焼くお好み焼きにも向く。
  • 男爵薯や農林1号よりもでん粉価が高く、手軽においしいコロッケが作れる。

【とうや】(農林31号:平成4年)「R392-50」×「WB77025-2」

  • 早生・大粒・多収の新品種で、植付け後3ヶ月(北海道)で収穫できる。
  • 株当り茎数が少なく、大いもになるので密植と少なめの施肥がよい。
  • 球形で目はやや浅く肉色は淡黄、肉質はなめらかでビタミンC含量も多く、サラダ、あえ物、煮物に向く。
  • 皮が剥きやすく変色しないので水につける必要がなく、煮崩れも少ない。

【ムサマル】(農林32号:平成4年)「ツニカ」×「根育20号」

  • 晩生・多収で黄色肉色の加工食品用の新品種でフレンチフライに向くが青果用としても有望。
  • 倒伏は少なく、疫病にも比較的強いため減農薬栽培が可能だが、褐色心腐が発生しやすいので、乾燥しやすい土地を避ける。

【キタアカリ】(農林29号:昭和62年)「男爵薯」×「ツニカ」

  • 早生でビタミンCが多く、粉質で良食味(男爵薯の系統)。
  • 最近、人気急上昇。耐湿性があり、湿地(水田からの転換畑)でも腐敗が少ない。
  • 皮付きのふかしいもやレンジ調理に向く。煮崩れするので煮物には不向き。
  • 男爵薯が母親で、煮えやすく(男爵薯の2/3の時間で可)スライスして水にさらし、熱湯で軽くゆがくだけでサラダになる。

【コナフブキ】(農林26号:昭和56年)「トヨシロ」×「WB66201-10」

  • 晩生・心臓型のいも型で目の浅い白肉のでん粉原料用品種で焼酎にも適する。
  • 従来、食用には使われなかったが、コロッケ、お好み焼きの原料として好評(この場合には、原料いもに光を当てないことが必要。)。
  • 多収栽培ではひょうたん型の長いもが増える。

【ホッカイコガネ】(農林25号:昭和56年)「トヨシロ」×「北海51号」

  • 晩生・多収でメークインに似たフレンチフライ向き品種。煮物にも適する。
  • いもの肥大が遅く、早期収穫ができないという難点はあるが、収量、歩留まり、耐病性、煮物品質などの面ですべてメークインを上回る。

【ニシユタカ】(農林23号:昭和53年)「デジマ」×「長系65号」

  • 「デジマ」をもとに暖地ばれいしょ育種の粋を集めた品種。
  • いもは扁球形で目が浅く、皮色と肉色ともに淡黄で外観に優れる。
  • 直立短茎でいもの早期肥大性に優れ、収量は春秋作とも多収、粒揃いがよく、裂開や二次生長も少ない。

【トヨシロ】(農林21号:昭和51年)「北海19号」×「エニワ」

  • 大粒で目が浅く加工歩留りが高い。
  • 還元糖含量が少なく、貯蔵性も良い。
  • 表皮にラセット(ザラザラ)があるため、我が国では青果用には使われず、専らポテトチップやフレンチフライに使われる。

【ワセシロ】(農林20号:昭和49年)「根系7号」×「北海39号」

  • 男爵薯の血を引いた品種で「伯爵」とか「ネオ男爵」とも呼ばれる。
  • 大粒でも中心空洞ができにくく、男爵薯よりも粉質で煮えやすい。
  • 早掘りでも、油加工に利用できるため、ポテトチップメーカーでは、操業初期に使用している。

【デジマ】(農林19号:昭和46年)「北海31号」×「ウンゼン」

  • 良食味の「北海31号」と暖地向け品種の「ウンゼン」の血をひく良食味品種。
  • 春作、秋作ともに多収で、表皮が滑らか。
  • 暖地の主力品種であった「タチバナ」よりも調理品質が優れる。

【農林1号】(農林1号:昭和18年)「男爵薯」×「デオダラ」

  • アルコール原料用を目的に育成された品種で、各種の用途にある程度利用できる。
  • 豊産性で、休眠が長いことから北海道から九州まで幅広く普及したが、最近は用途別の新品種に押されて作付面積シェアが低下している。

【紅丸】(昭和13年)「レンプケ・フルエ・ローゼン」×「ペポー」

  • 極多収品種。表皮が赤く、ほとんど全量がでん粉原料用に使用されている。
  • 冬には甘みを増して煮物にも使えるため、地域によっては青果用としても用いられる。

(3)最近の民間育成品種

【きたひめ】(ホクレン育成:平成13年)「ホワイトフライヤー」×「さやか」

  • ポテトチップ用の民間育成品種で、長期低温(6℃)貯蔵後のチップカラーが優れる。
  • ジャガイモシストセンチュウ抵抗性。球形で、目はやや浅く、皮色は黄白、肉色は白。
  • 中心空洞が発生することがある。

【ノースチップ】(ホクレン育成:平成11年)「ホッカイコガネ」×「ND860-2」

  • 北海道で初めての民間育成奨励品種でポテトチップ専用。
  • チップカラーが優れている。球形で、目はやや浅く、皮色は黄褐。肉色は白。
  • でん粉価がやや高く「トヨシロ」程度で、同品種より低温貯蔵が可能。
  • 2Lサイズは、「トヨシロ」より少ないので、地域を選んで栽培する。

(4)主な導入品種

【男爵薯】

  • 明治41年頃、函館ドック社の専務であった川田男爵がイギリスのサットン商会を通じて導入したアイリッシュ・コブラーという名前のアメリカの品種で、アーリー・ローズの変異したものと言われている。
  • でん粉質で粉ふきいもに適し、食味が良く、栽培しやすく貯蔵性も良いが、目が深く、大いもでは中心空洞ができやすい。

【メークイン】

  • 19世紀末にイギリスでサドラーという人が栽培していたものを、サットン商会が世の中に紹介したもの。
  • 目は浅く、肉は黄色、粘質で舌触りが良く、低温で貯蔵すると甘みと粘質が増す。
  • 煮崩れが少ないために、シチューやカレー、サラダなどに向く。
  • 緑化しやすく、休眠が短く、芽疫病に弱いなどの難点がある。

【スノー

  • アメリカで育成され、カルビーポテト株式会社が日本に紹介した中晩生の民間導入品種。
  • トヨシロよりやや低収ででん粉価が低い。長期低温(9℃)貯蔵向けポテトチップス原料用品種で、収穫翌年の6月まで利用可能である。
  • 茎内部障害が少なく、塊茎腐敗に対する抵抗性が強である。ジャガイモシストセンチュウに抵抗性がない。

デン】(平成3年種苗登録)「B5141-6」×「WISCHIP」

【シンシア】(平成15年種苗登録)「Landie」×「O’Sirene」

  • フランスで育成され、キリンビール株式会社が日本に紹介した中早生の民間導入品種。
  • 青果用でたまご型のきれいなかたちをしており、肉色は淡い黄色。香りが高く、また甘みが強い。
  • 粉質と粘質の中間で、ややなめらかな舌触り。
  • 芽が出にくく、煮ものなどにした時にも煮くずれがほとんどなく、また黒変もない。