東京からサツマイモが大好きという人がきた。70近い女の人で、こんな話をしてくれた。

「わたしは戦争中、中国にいました。まだ子供で両親と一緒でした。場所?華北の石家荘という大きな町でした。冬になると家の近くの道端につぼ焼き屋が現われました。
針金の先に、いもを丸ごとひっかけます。それをつぼの内側にたくさん吊して焼くのです。そのおいしかったこと。毎日買ってたべました。それがいも好きになったきっかけでした」

大野史朗の『農業事物起源集成』(丸山舎)によると、つぼ焼きの元祖は中国の東北地区。それが昭和4年に上海からわが国の関西地方に入った。東京へは翌年、京都から入り激増、その数はたちまち500軒以上にもなったとある。
中国の都会の人たちは焼き芋が大好きだ。
だから冬になるといまでも道端に焼き芋屋がたくさん現われる。ただ「つぼ焼き」は見当たらない。ドラム缶や土製のかまどを使って焼くものばかりだ。つぼ焼きはいつの間にか消えてしまったようだ。
それでも今日は本場のむかし話を聞かせてもらうことができて、ありがたかった。