今日は伊豆七島の一つ、新島から須貝紀代さんがこられた。須貝さんは新島で生まれ育ち、中学校の英語の先生をされていた。定年退職後のいまは島の郷土料理研究会の会長をされている。
新島名物はクサヤとアシタバ。それになにかもう一つ加えたいと思って探していたら、サツマイモが浮かんだのだという。新島には水田がない。冬作の麦と夏作のサツマイモが命の綱だった。だからサツマイモ畑はいまでも方々にある。そのたべ方を伺っていて、おもしろいと思ったのは「いものほしい」だった。

「ほしい」は「乾飯」と書く。米を炊いて乾燥させたもので、湯や水に浸せばすぐたべられる。旅人や戦陣の武士用などの保存食であり携行食であった。それは知っていたが、「いものほしい」とはどんなもので、どう使うのだろう。須貝さんによるとこうなる。
新島のいもは「アメリカ」。皮の白いいもで「七福」ともいう。いも掘りは10月だが、ほしい用はすぐは使わない。1~2ヶ月置いといて、あまみがでてから使う。ここの冬の風は強い。12月から3月にかけて冷たい西風がピューピュー吹くので、それを待って作る。
いもの皮をむいて蒸し、つぶす。ドロドロ状になる。それをエンガーに入れて干す。エンガーは浅い木の箱で、底は竹で編んだもの。風の通りをよくするためだ。時々中のものを手でひっくり返す。2~3日もすればカラカラに乾く。これがいものほしいでむかしからあった保存食。
それで作るごちそうに「いももち」があった。米のない島で米を使うのはぜいたくな話だが、米の餅を蒸す。いものほしいも蒸す。両方を合わせてついて丸餅にする。
いまの新島は観光地で観光客がたくさんくる。須貝さんはその人たちにこれをたべてもらいたい、みやげにもしてもらいたいと思っているのだという。それでヨモギ入りやアズキあん入りなども作っている。

わたしもおみやげにと持参されたそれをごちそうになったが、その土地ならではの風味と暖かくやわらかい感触がよかった。これなら観光客にも喜ばれる名物になると思った。