さつまいもの栽培特性・条件

(1)栽培の適地

【温度】

  • 9℃以下で冷害を受け、10~15℃で休眠状態、16℃以上で発芽、発根を始め、温度が高いほど生育は良いが、35℃以上では生育が減退する。
  • 最高温月の平均気温が22℃以上、あるいは年平均気温10℃以上のところで、生育期間の積算温度が3000℃以上が適地。経済栽培可能なのは東北の福島、宮城,、北陸の新潟以南、長野県、群馬県の標高700m以下の地域とされる。
  • 15℃以下の時期に早植えすると苗の活着が悪く、その後の生育も極めて悪い。
    しかし高温過ぎると根の組織が木化していも数が少なく、ごぼう根となる。

【日照】

  • 植付け時に日照不足だと発生した根の発育が止まり、いもの肥大が遅れる。
  • 塊根形成には、1日11~12時間の日照時間が最適で、7時間以下ではいもの肥大が阻害され、特に生育後期の日照不足により乾物生産が顕著に減少する。
  • 日照時間の反応は、品種によって異なり、肥大の早い品種は反応が少なく、晩生品種では顕著である。

【降水量及び土壌水分】

  • 生育期間中
    470mm程度の降雨量、土壌水分60~70%が最適とされる。
  • 乾燥に強く砂地、火山灰土、傾斜地などでもよく生育するが、植付け期の乾燥は活着不良、8月の生育中期の干ばつは乾物生産量の減少をもたらす。
  • 滞水、冠水害には極めて弱く、過湿地では高畦や粗大堆肥の施用により排水を良くする必要がある。

(2)いもの形成と環境条件

  • 節から発生した根が肥大して塊根ができるが、すべての根が塊根を形成するわけではなく、形成層の発達や貯蔵組織の発達のしかたによって分化する。
  • 根は、表皮、皮層、中心柱からできており、中心柱の木質部柔細胞の木化程度が少なく、形成層がよく発達した若い根が塊根に分化し肥大をはじめる。
  • 形成層の活動が盛んでも木化が多いとごぼう根(梗根)となり、反対に木化が少なくても形成層の活動が鈍い場合は細根となる。
  • 日照不足や低温、過湿、窒素過多、硬い土壌は塊根の形成肥大を妨げ、適当な降雨と高温多照、カリの施用、やわらかい土壌は塊根の形成肥大を促進する。

(3)土壌条件

  • 根の生育といもの肥大には、通気性の良い土壌で充分に酸素を供給することが必要で、土壌が固く締まっていると酸素不足となり、つるぼけとなる。
  • 通気性の悪い重粘土壌では、畦の高さや、土壌の改良に注意し、堆肥の施用に努める。
  • 乾燥するといもの形状は丸く、多湿では長くなる。色沢、肉質も、極端な乾燥過湿では色が淡く、肉質も悪くなる。
  • さつまいもは酸性土壌に強く、4.2~7.0の土壌pHの範囲では、生育、収量に差はみられない。
  • 厚い耕土では地上部、地下部共に生育は良く、いもの形状が整って品質もよくなるが、耐肥力の弱い品種では窒素過多でつるぼけを誘発することがある。

(4)生育の経過

  • 熱帯地方では多年生であるので、つるの先端を切り取つて土にさすだけで不定根を発生して活着し、不定根は伸長して塊根をつくる。
  • 温帯地方では、種いもを温床に伏せ込み、保温、潅水に注意すれば、25~30℃、5~7日で萌芽し、40~45日で、種いも1個当たり、20~30本を採苗できる。
  • 定植された苗は条件がよければ1週間くらいで葉柄の基部から発根して活着する。活着後、2週間くらいで根は急速に伸びだす。
  • 苗の葉柄の基部には、根の基(根原基)があり、大きな根原基は早く伸びて太くなるが、小さい根原基は伸びが遅く、3週間もすると両者の間に区別がつき細根は肥料分を吸収する吸収根となる。
  • 活着して1ヶ月もすると、気温も上がってくるので地上部は急速に生育し、葉数も増えて地面をおおい受光面積を広げて光合成が盛んになり、地下部は塊根が太り吸収根(細根、若根)は伸長して養分を吸収する。
  • その後、地上部は8~9月にかけて最大となり、光合成産物を盛んに根に送り込み、塊根は肥大してでん粉を貯える。